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こんばんは、セカコンです。
三月も下旬となり、昼間はほんのり暖かい陽気となってきました。

昨日や今日は計画停電が元々なかったのですが、
節電しようということで午後は照明を消してカーテン全開にしていました。

晴れているとかなり部屋の中が明るくなります。
そして自然の光なので柔らかくて気分も良くなります。

あと、私は花粉症ではないので窓を少し開けてます。
15,6度だとけっこう風が気持ちいいですよ。

今日の午後はそんな部屋の中で勉強したり読書したり、
あとはTV版のSPのDVDを観たりして過ごしていました。優雅な時間でした。


今日はvol.9ですね。互いに伝えられなかった想い・・・。


それでは、vol.9をどうぞ。

~SELL 8 Nruter~


 ――ごめんともう一つ伝えたい言葉がある。


 雨の中必死になって走った。
 すぐにいなくなりそうな気がして。


 私が走って向かった先は咲夜さんの屋敷だった。
 三千院家のようなセキュリティはなかったので、難なく屋敷に入ることができた。三年ぶりに屋敷にやってくるが、咲夜さんの部屋がどこにあったのかは覚えていた。


 「咲夜さんっ!」


 部屋の大きな扉を開けると、大きなソファーに座る一人の少女……愛沢家の令嬢である咲夜さんが座っていた。
 「あんたは……ハルミさん? どうしたんや、そんなに息切らして……」
 咲夜さんが心配そうにしてこちらに近づいてくる。
 「それに、こんなに濡れて……今すぐ使いを呼ぶから、まずはその濡れた服を脱ぎ」
 「……咲夜さん」
 「何や、私に何か用なんか?」
 「私はハルミなんかじゃありません……」
 「どういうことや?」
 咲夜さんも何を言おうとしているのか分からないらしく、困惑している。さあ、勇気を持って自分の事を言うんだ……!
 気持ちを落ち着かせるために大きく深呼吸をして、静かに言った。


 「私、三年後の未来から来た……春風千桜なんです」


 その言葉の後、数分ぐらいだろうか。沈黙が続いた。でも、その沈黙は私にとっては数時間のように感じた。
 「……納得やな」
 「えっ?」
 「ハルミさん……いや、ハルさん。あんたに初めて会ったとき、妙に見た目も声も似ているからその時、未来から来たハルさんなんかな……って思ったんや」
 「さすがですね、咲夜さんは……」
 「でも、同じ時間に同じ人間は二人いるわけないやろ? だからあの時はよく似ている人やって割り切ったんやけど……まさか本当にいるなんてな」
 そう言って咲夜さんは笑っている。でも、やはり……咲夜さんは私の仕えていた主だけあった。そう思ってくれていたなんて。
 「今、このタイミングで来たっちゅうことは……もしかして」
 「……この時代の千桜は、泣き崩れてムラサキノヤカタに帰ってきました」
 「……そうか。悪いことをしたな」
 今の一言に私の考えていたことは当たっていたのだと確信する。さっき、私がナギに対して思ったことと同じことを……。
 「咲夜さんは本気で綾崎くんを奪う気なんて無かったんですね」
 「……三年経ったハルミさんにはお見通しっちゅうわけか」
 「いえ、三年経ったっても私には分かりませんでした。この時代に来て、この時代のナギや綾崎くんにマリアさん、それに……千桜とも関わってようやく分かったことです」
 「随分と泣ける話をしてくれるやん」
 「その泣ける話を作るきっかけとなったのは、三年前の八月二十九日……つまり、今日ですよ。咲夜さん」
 「はははっ、返されてしもうたわ」
 笑ってくれているが、その声に元気はない。口元は笑っているが、目は笑っていない。むしろ悲しんでいる。
 「分かったこと……私に話してくれへんか?」
 「ええ、もちろん」
 「じゃあ単刀直入に訊くで。何でウチは、この時代のハルさんに……あんなことをせなあかんかったのか?」
 「もちろん、それは……」
 思い出していた。あの夜、咲夜さんが棺の中で……悲しそうな表情をして眠っているところを。
 だけど、それにも向き合わなければならない……!


 「あなたがもうこの先長くないからですよ」


 「死ぬ」という言葉も「余命」という言葉も使いたくなかった。しかし、これが現実。それはあの通夜が物語っている。
 「ご名答」
 咲夜さんは静かに拍手をする。
 「咲夜さん、あなたはそのことを知ったときどの道……千桜、いえ……私が悲しむことを確信した。そこで考えた、『どの悲しみ』が一番私にとって軽く済むかというのを」
 「ほう……それが、付き合っている借金執事を奪うことやったんか」
 「そういうことです」
 「でも、その選択は……間違いやったって言いたいんやな?」
 「……その通りです、咲夜さん」
 この日から……通夜までの三年間。楽しい日々もあれば寂しい日々もあった。でも、何かやりきれない感情が常にそこにあったんだ。その種はここにある。
 「嘘をついて欲しくなかったんです」
 「嘘、か……」
 「私はこの日から咲夜さんが亡くなった次の日までずっと……苦しんでいたんですよ! あんな別れ方をした自分が悔しくて……!」
 「……」
 「何度も咲夜さんの屋敷に足を運ぼうと思いました。でも、咲夜さんに会う勇気が出なくて……結局、あなたに謝れなかった……!」
 「謝れなかった……? どうして謝る必要があるんや?」
 「だって、私は……咲夜さんに私には嘘をついた方が良いと思わせて、真実を言えない苦しみを与えてしまったと思って……! 私が弱い人間だったから!」
 「……」
 「だから、本当に……ごめんなさい!」
 私は土下座をしてそのままだった。気づけば泣いていた、涙が頬を伝って分かる。
 「謝られるのは私には似合わん」
 「咲夜さん……」
 「謝るのは私の方や。ハルさんがそんなに弱い人間だなんて思ってない。あと、自分があと一年で死ぬなんて……認めたくなかっただけなんや」
 「……」
 「ハルさんにそれを言ったら……自分があと一年で天国に逝ってしまうことを認めてしまう。この楽しい生活を一瞬にして消えてしまう、ハルさんとも会えなくなってしまう。そこから……逃げたかっただけなんや」
 「咲夜さん……」
 「だから、ハルさんは全く悪くない。自分を責める要素なんて何にもないんやで」
 「それでもやっぱり……真実を話して欲しかった。あなたがあと一年で亡くなると言ってくれたら、私は咲夜さんとの日々を大切にしようと思った!」
 「……苦しかったんやな」
 「とても苦しかった……あの時、咲夜さんの通夜の後……私は全てを失いました。私は咲夜さんに謝る勇気が持てるように頑張って勇気が出たその時には謝りに行こう。この日以降の……唯一の生きる目的でした。でも、それも果たせなくなった。だから、私は……死のうって思ったんです」
 「……」
 「この世にいない。だったら、私からあの世に逝って咲夜さんにあって謝ろうって思ったんです。でも、それって……間違いなんですよね」
 「……大間違いや、アホ」
 すると、咲夜さんは私のことを抱きしめてくれた。咲夜さんも泣いていた、私の髪を通りそして頬に涙が流れてくる。
 「私が苦しかったように、咲夜さんも苦しかったんでしょうね……」
 「当たり前や、今のハルさんの話を聞いてもっと苦しくなったわ」
 「ごめんなさい」
 「でも、今の話を聞いていると……私はとんでもない間違いを犯してしまったんやな。ハルさん、すまなかったな」
 「……」
 その時、使用人の人がやってきて咲夜さんが私への替えの服を用意するように言ってくれた。そして、その人が持ってきた服を着た。
 「似合うやん」
 「……ありがとうございます」
 「それから、ハルさんは……どんな生活をしていたん?」
 「あれからは必死に受験勉強をして……普通の四年制大学に進学できました。大学の友人と……この前、ナギと参加したイベントに参加したりして。けっこう楽しい生活を送れています」
 「……そっか」
 「たくさんの人が私のことを気にかけてくれました。高校を卒業するまで……でも、誰一人とも相手にしなかった」
 「……どうして?」
 「自分の中で……逃げていたからだと思います。それに、咲夜さんと綾崎くん以外には、今日の事を話したくなかったから」
 「相当私はハルさんに傷を負わせてしまったんやな……」
 「でも、きっと……皆、知っていたんだと思います。きっと綾崎くんが……。たぶん、咲夜さんの命ももう長くないことも」
 「……」
 「高校卒業までは孤独だと思っていました。でも、今思うと……私のそばにいた友人、私のことを考えてくれていた友人は確かにいたんだと思います」
 「友達の存在は大きいものやな……」
 もし、この日に……咲夜さんが本当のことを言っていたらどうなっていたのだろう? それは分からない。でも、確実に言えるのは……この機会を与えてもらうことはなかったということだ。
 「今の話を聞いていると、私は一年以上生きられそうなんか?」
 「……ええ、今から三年くらい生きられます」
 「そうか……あと三年も生きられるのか」
 「……咲夜さん、いったいどのような病気で余命一年と宣告されたのですか?」
 「ん?」
 咲夜さんは頭をポリポリかきながら、テーブルの上に置いてあった診断書を私に渡してくれた。
 「“がん”……ってそれじゃ手術をすれば治るじゃないですか!」
 「でも、できた場所が手術じゃとても細胞を取り出せないって言われて……延命治療をしても若いから進行速度に敵わないって言われてな」
 「咲夜さんなら……愛沢家の力があれば腕利きの医者を探して治すことはできるんじゃないんですか?」
 「……でも、受け入れたんや。これも私の人生なのかなって」
 「そんな……」
 「でも、それって嘘なんかな。ハルさんに本当のこと、言えなかったもんな」
 咲夜さんは笑っている、どうして笑っていられるんだろう……?
 「あと、今のハルさんの話で前向きになれたわ。あと……三年も生きられるんやろ? 医者に言われた命の三倍生きられるんやろ?」
 「ええ……」
 「そうか、少し安心したわ」
 今の表情はメイドをやっていた時に接していたいつもの咲夜さんだ。咲夜さんはなんて強い人なのだろう、そう思ってしまう。
 「三年後のハルさんに会えて良かったわ。ちょっと、悪いことをしてしまったかな……って思っていたところだったんや」
 「……私も同じことを思いました」
 「えっ?」
 「この時代に来て、ナギと今までにないほど……一緒に過ごして、一つの物に向かって頑張ってきました」
 「たしかに、あの時のナギは楽しそうやったからな……」
 「私もナギと過ごしているうちに、三年後に戻ることをすっかりと忘れてしまっていたんです」
 「……」
 「ナギはイベントが終わった日の夜に、友達だからずっと一緒にいて欲しいと言って……その時に、ようやく自分の考えるべきことが浮かんできたんです」
 「それって、なんや?」
 「どうやったら互いに納得した別れができるかです」
 「……なんや、それ……」
 「私は必死に考えました。それで、私は……咲夜さんがしたことが答えなのだと思いました。でも、それは違った」
 「……答えって何なんや?」
 「私なりの答えは、正直に話すことだと思いました。もう会えなくなるっていうことと、ナギは私にとって最高の友達であるということを」
 「それをナギに言ったわけか」
 「ええ、ナギは思った以上に心の広い人で……強い人だと思いました。三年後に会おうって言ったら、『待ってるよ』って言って……くれて……」
 また……涙が出てきた。こぼれ落ちる前に必死に拭った。
 「きっと、三年後のナギは元気なハルさんを待ってるんやな」
 「でも、私は……ずっとハルミだと偽っていたんですよ?」
 「心のどこかでは思ってたはずや。ハルミさんは未来から来たハルさんだって……だから言われたんやろ? 『待ってる』って」
 「……そうだと信じたいです」
 三年後、ナギは一体どうしているのだろう……? 私と過ごしたこの日々を覚えてくれているのだろうか……?
 「そうや、ハルさん」
 「なんですか?」
 「これも何かの運命や。ちょっと待ってて、良いものあげるから」
 咲夜さんはそう言って部屋を出て行ってしまった。一体何をくれるのだろうか……? 楽しみにしながら待っていると、小さな箱を持って咲夜さんが入ってきた。
 「これや、ハルさん」
 「これは……指輪ですか?」
 「そうや。父が作ってくれた指輪でな……大きくなったらつけなさいって言ってくれたんや。でも、私はもうこの指輪のちょうど良い大きさになるまで生きてられるかは分からへん。だから、ハルさんにあげるわ」
 「良いんですか?」
 「きっとこの指輪も、誰かの指にはめて欲しいと思ってるやろ」
 「……ありがとうございます」
 高級そうな黒い箱には、指輪が入っていた。シンプルな銀の指輪。しかし、内側に『SAKUYA』と刻まれている。咲夜さんはそれを取り出して、私の右手の薬指にはめてくれた。
 「ピッタリやな」
 「右手の薬指って……婚約指輪みたいじゃないですか」
 「……そうか。でも、ハルさん。ウチとハルさんは……私が死んだ後もずっと友達や、その証だと思って欲しい」
 「……はい」
 「似合ってるで、ハルさん」
 「ありがとうございます」
 「ハルさん、今日は本当にありがとう。ウチ……死ぬまで精一杯生きるわ」
 「……こちらこそ」
 「離ればなれになってもウチらは……ずっと繋がってるで」
 「はいっ……!」
 「……」
 もう、お別れなのだろうか。視界がぼやけてきた。いや……これは涙だ、別れたくないって感情からきた涙なんだ。きっと……。
 「咲夜さん、今までありがとうございました」
 「ああ、ハルさんも頑張ってな」
 私は咲夜さんと……力強く握手を交わした。改めてその温もりは……ずっと三年間求めていた暖かさだった。

 だが、その時だった。


 「けほっ、けほっ……ごほっ!」


 雨に打たれたせいなのか、身体が冷えてしまっていたのか……咳がこみ上げる。呼吸ができず、辛くなってくる。意識がもうろうとし始めてきた。
 「ハルさん、大丈夫か……!」
 「大丈夫です……おえっ!」
 そして、身体の中からこみ上げてきたのは……血だった。熱くこみ上げる……息を吸おうとしても気持ち悪くなって、そのまま血を吐き続けた。
 「おいっ、救急車を……救急車を呼ぶんや……!」
 私はその場に倒れた。咲夜さんの声も段々と遠くなってくる……。


 意識が薄れる中で思った。
 神様は死ぬのを先延ばししていたのだと。
 あの日、大量の睡眠薬を飲んで……本当は死ぬはずだったんだ。でも、神様はそれを許さなかった。私に三年前に咲夜さんが体験したことをこの身で体験させられ、そして目的が達成したこの瞬間に死を迎えるのだと。
 もしそうなら神様に感謝している。でも、少し恨みたい部分もある。そう、なぜなら……。


 ――もう一度友達と会いたかった。



 そして、私はどこかに旅立った。



最終vol.10に続く。
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