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こんばんは、セカコンです。
今日は計画停電は行われませんでした。

なので、今日から営業を再開する映画館も出てきました。
私がよく行く映画館も今日から営業再開です。

もし地震が起こっていなければ今週中に映画を観に行ったと思います。
『SP-革命篇-』を早く観たいです。

今月の上旬にスペシャルで「革命前日」をやっていたんです。
それを見ていたら今公開中の革命篇をもの凄く見たくなりました。

唯一の後悔は『野望篇』を映画館で観なかったことです・・・。
まあ、後悔していた時期が時期でしたからね・・・。


今日はvol.8ですね。千桜の恐れていることは何か?


それでは、vol.8をどうぞ。

~SELL 7 曇りのち●~


 ――友達って何だろう?



 八月二十九日



 「ずっと一緒にいて欲しい……」


 その言葉を聞いて二週間以上経った。
 一度はそんな事で悩んではダメだと思い奮起しつつも、再び自責の念がこみ上げてきた。何をここまで悩ませているのか。
 あれからも猛暑は続いた。しかし、私は冷房の利く部屋の中に入っていた所為なのか、コミケの疲れなのか五日ほど熱を出してしまった。いわゆる夏風邪というやつだ。
 ナギに会うのが段々と辛くなってきたから、風邪を引いたことは私にとっては好都合だった。気持ちの整理もしたいと思っていた。マリアさんに風邪がうつるから暫く部屋に入ってこないでと伝えておいたら、ナギはそれを忠実に守り部屋に入ってこなかった。
 「見舞いに行った方が良いか……?」
 そんなナギの声が聞こえる日もあった。しかし、マリアさんが優しく私の伝言を言うとナギは諦めて自分の部屋に入っていく。
 だが、熱も引いて……喉の痛みと咳だけが残り、普通の生活も出来るようになった今日、八月二十九日は曇りだった。今日は少し涼しい。三十日以上続いていた真夏日が今日で途切れるという予報だった。


 「ハルミ、大丈夫か……?」


 薬が効いていたせいか、起きたのは午前十一時頃だった。顔を洗い歯を磨き……冷たい麦茶を少し飲みながら風邪を引いている間に放送していたアニメを一話分観た。
 そして今、昼食を作っているときにナギがやってきた。たぶん、材料を切っている音で私の体調が大分良くなったのだと考えたのだろう。
 「ああ、大丈夫だよ。咳が少し残ってるけどな」
 「そうか、なら良かった……だって、二週間も部屋に籠もりっきりだったから、私、心配でしょうがなかったんだ」
 「なに、そこまでひどくないって……ありがとう」
 今の私は酷い言葉よりも優しい言葉の方が胸に刺さる。ああ、優しくしないで欲しい……と切に願ってしまう。
 「それで? どうしたんだよ。綾崎くんとかは?」
 「いや、今は……マリアと昼食を作ってる。ハルミの具合が良かったら、晴海を誘って一緒に昼食にしたかったのだが……。」
 「……そうか。でも、私も作っちゃってるから……ごめんな」
 「そうか、じゃあ……千桜を誘ってみるよ」
 「うん」
 「ハルミ」
 「なんだ?」
 「午後に……話があるんだけど良いか?」
 「……ああ、いいよ」
 ナギはそう言うととても喜んだ表情をした。
 「じゃあ、また後で」
 ナギはそう言いその場を去った。
 きっと、二週間ぶりに顔を見られてとても喜んでいるんだろう。二週間も会わなければ、何かの大病に罹ったんじゃないかと思うだろうから。
 午後にまた会おうというのも、きっとこの二週間のうちにあったことを話したいのだろう。漫画・アニメのことや綾崎くんとこの時代の千桜のことだって……。
 『ぷぅ……っ!』
 「あっ、忘れてた」
 考え事をしていたせいか、やかんでお湯を沸かしているのをすっかりと忘れてしまっていた。
 昼食はラーメン。昔は嫌いだったのだが、一人暮らしをしたせいか簡単に作れてバラエティーに富んでいることから、三年の内にすっかりと好きになっていた。今日は醤油豚骨味だ。カップ麺ではない生麺のラーメンだ。
 病み上がりの今の時期、そして少し普段より涼しい日は……やはり温かい食事の方が良いと思いラーメンに決めた。
 やはり一人の時間は良いな……と思う。他人のことを考えなくて済むし。寂しいんじゃないかって言われるかもしれないけどそんなことはない。気を使うよりも寂しい方がよっぽどマシだ。
 十分後。麺も入れる野菜も茹で上がり、ラーメンは完成した。暑いのでお盆の上に乗せて、小さい円卓まで運ぶ。
 「久しぶりの麺だな、いただきます」
 まずは一すすり。麺が少しかためで美味しい。胡椒とラー油をかけて辛口にしよう。
 「……うん、この位がちょうど良いな」
 美味しい物を食べると気分がいくらか良くなるというのは本当だな。何だか少し、悩みが吹っ飛んだ気がする。
 スープが熱いのか、ラー油が辛いのかは分からないが……汗をけっこうかいてしまった。まあ、冷たい物を食べて震えるよりもよっぽど健康には良いだろう。
 「ふぅ……」
 タオルで汗を拭く。またぶり返してしまうかもしれないからな。
 麺が伸びないうちに食べきった。スープを一口飲んで昼食を終える。久しぶりにお腹いっぱいに食べた気がする。
 「ごほっごほっ……」
 今気がついたが、喉が痛いのに辛い物はだめだったか。少し喉がひりひりしてしまった。薬でも飲んでおこうか……。
 市販の薬を飲み、後片付けをして……ベッドの上に仰向けとなる。天井をただただ見つめ……これからどうするべきかを考える。と言っても、この時代では大学の生徒でもないので早く元の時代に変える方法を考えなければならない。


 「でも、ナギと別れなくちゃいけないんだよな……」


 もし私がいなくなったら……? ナギはずっと悲しむことになる。突然いなくなったら尚更だ。
 実はこの二週間ずっとこのことを考えていた。でも本当は、この時代に来てしまったあの日から考えるべきことだった。本当に私は馬鹿だ。
 ましてや、この時代での友人を作ってしまった。たぶん、誰も否定しないだろう……親友と言うべきところまで来ているのかもしれない。
 だからこそ、つらい。私がいなくなったら……彼女は悲しむんじゃないか? 一生、寂しい思いをするんじゃないか……?
 そうさせてしまったのは自分自身だ、本当に元の時代に変える方法だけを考えれば良かったのに……!
 「ちくしょう! ちくしょう! ちくしょおおっ!!」
 ベッドを激しく叩きながら叫んだ。しかし、だからといって戻れるわけでもなく、かえって喉の痛みが悪化して痛い目に遭ってしまう。
 「くそっ……」
 激しく泣きたい。
 誰にも届かなくて良いから、泣きたい。
 でも、泣けない。
 きっと、ナギ達が心配して自分の所に来るのを恐れているからだ。
 「……どうすりゃいいんだよ、まったく……」
 すると、窓の外から雨音が聞こえる。今日の天気は下り坂と言っていた。まるで、私の代わりに泣いてくれているみたいだな。
 今は雨の方が良い。晴れなんて……大嫌いだ。
 大嫌いだ、晴れなんて……大嫌いだ。
 雨音は私の心慰めてくれる。その音が……私に向かって「泣いて良い」と言ってくれているようで。
 もういい、泣いてしまおう。


 どうやって元の時代に戻ろう?


 どうやって……ナギと別れよう?


 分からない……。


 ……。



 「る……み……は……るみ……ハルミっ!」



 私を呼ぶ声?


 目をゆっくりと開くと……金髪の少女がいる。どうやら、ナギらしい。
 「起きたか、ハルミ」
 「……人の部屋に勝手に入ってくるなよ」
 どうやら、泣いてしまったようで……そして、泣き疲れて気づかない間に寝てしまったらしい。時計も三時を回っていた。
 「ごめん、鍵、開いてたから……」
 「まったく」
 「あと、午後に話があるっていうのに……寝てるんじゃないぞ」
 「……ごめん」
 少し不機嫌そうな顔をしているが、すぐに笑顔になる。
 だめだ、こんな笑顔を見せられてしまっては……別れることなんて絶対にできない。しかも、このままで良いとも思ってしまう……。
 「麦茶でも飲むか?」
 「……いや、いいよ。今日は何だか、ちょっと寒いし」
 「寒い、か……」
 そういえば、今日は起きてからクーラーを点けていない。しかも、点けたか分からないくらいに涼しかった。昨日までの暑さに比べるとナギの言うように寒いというのは当然のことなんだろう。
 「それで、話はなんだ?」
 「ああ、これなんだけど……」
 ナギはB5サイズのチラシを出した。どうやら、ある漫画のオンリーイベントの告知らしい。
 「この漫画、ハルミも好きだよな?」
 「ああ、好きだよ」
 「私、この漫画が大好きでさ……この漫画の同人誌を作りたいと思っているんだ」
 「……」
 「このイベント……十一月の初めにあるんだ。今から申し込んで、それで……一緒に同人誌を作って、また一緒に売りたいんだ!」
 「……」
 「ダメ、かな……?」
 そんな眼で見ないでくれ……私に何かを求めるような眼で、見ないでくれっ!
 この時、私は……闇に取り囲まれた気がした。
 そして態度に表れてしまったようだ。机を叩いて怒鳴り声を上げた。


 「そんな勝手に物事を決めるんじゃない! 私のこと全く考えてないだろ!」


 たぶん、初めてだったと思う。こんな声、ナギに向かってあげたこともない。だからかもしれない。ナギは目を見開き、口元が引きつっていた。
 「えっ、ご、ごめん、な……」
 「……」
 「そうだよな、私が悪かった。ハルミだって大学のことで色々あると思うし、そんなこと全く考えて無くてこんなこと言って……本当にごめん」
 ナギには考えられない、土下座という態度を取ったが……それに対して私は何も言えなかった。
 むしろ、逃げたかった。
 「ちょっと外の空気を吸ってくるよ……」
 「う、うん」
 私はスリッパを履いて部屋の外に出る。
 外が雨なのか……廊下は薄暗かった。玄関の灯りだけが点いていて……それが非常に寂しく思えた。
 雨はどうやら本降りになってきたようだ。ざあっ……と、雨音が廊下にも響いている。私はその中を一人で立ち尽くしている。


 これ以上……もう耐えられない。
 どうすればナギと離れることができるんだ!


 私は悩んだ。そして分かった、どうしてここまで悩むのかを。
 自分に恐れているんだ。
 別れを切り出したら……寂しくなるのはナギだけじゃない。そう、一番に寂しくなり悲しくなるのは……他でもない私だ。
 それに逃げてきたんだ、二週間以上……ずっと。
 「ハルミ……?」
 「ナギ……」
 「どうしたんだよ、悲しい顔なんてして……」
 きっと今、それに気づいた私は……ナギとの別れを決意しなくてはならないんだ。永遠の別れを、今、この場面で……。
 でも、どうやって?
 「永遠に別れましょう」ってストレートに言うか? それじゃナギは絶対に納得しないだろう。いや、誰一人納得しないだろう。
 そして、最後の闇が私を支配した。
 良い案を思いついた。そうだ、この関係を……壊せるまで壊してしまおうって。そうすれば、ナギは私のことを忘れてくれるって。そうすれば自然と自分も苦しくなくなるって。
 「ナギ……おまえにずっと言いたかったことがある」
 「ん?」
 何を言おうか……。その時だった。


 『ガシャッ!!』


 玄関の引き戸が思い切り開かれた。そして、勢いよく私たちの前を通り過ぎたのは……。


 泣き崩れる千桜だった。



 ――そうか、そういうことだったのか。



 私は気づいた。三年前の今日……綾崎くんと別れたことを。
 そして、咲夜さんと永遠に会わないって決めたことを。
 「擬似体験……」
 「え……?」
 神様って、本当に残酷なんだな。
 私にそういうことをさせていたのか。
 私はこの時代に来て……今日まで、咲夜さんが感じていたことを再現させられていたんだ。三年前、つまりこの時代に咲夜さんがしたことを。


 「ナギ、私ともうこれっきりで会えなくなったら……どう思う?」
 「えっ……」


 勇気を持って聞いた、残酷な質問だけど。ナギは少し不安な表情をしたがすぐに優しい表情に変わった。
 「そうだな、寂しい気持ちになる。でも、たとえもう一生会えなくても……心で繋がっている。それに、ハルミとのたくさんの思い出ができたからな」
 「……」
 「それに、どんなに離れていても……私たち、友達だろう?」
 「……ああ、私たちは友達だ。最高の、友達だ……」
 私はナギの精一杯抱きしめた。ごめん、嫌いになろうとして……本当にごめん。ナギも私を抱きしめてくれていた。


 「ナギ、今までありがとう。ナギのおかげで勇気が出たよ」
 「……そうか」
 「もう、これっきりで会えなくなる。もし会えたら……三年後にまた会おう」
 「……待ってるよ」


 ナギは想像以上に成長していた。逆に私の方が子供だったぐらいだ。何を恐れていたのだろう、改めて思う。私は馬鹿だって、臆病者だって。
 でも、逃げない。私はそう心に決めたんだ。私は雨の中……ある所に向かって走り出した。


 ――あの人と会うために。


vol.9に続く。
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