さて、ヒナギクSS『First Love』vol.2です。
果たして、どこでヒナギクの初恋の話は展開されていくのか。
今回は現実編のみ。ボリュームはめちゃくちゃ少ないです。
初めて千桜登場の場面です。
それでは、vol.2をどうぞ。
果たして、どこでヒナギクの初恋の話は展開されていくのか。
今回は現実編のみ。ボリュームはめちゃくちゃ少ないです。
初めて千桜登場の場面です。
それでは、vol.2をどうぞ。
~SELL 2 思い出を撮る~
そんなコトを、曖昧な記憶の中・・・ヒナギクは歩に初恋の話をしていた。
「へえ、その男の子って・・・ヒナさんに優しいんですね。」
「うん。・・・誰だったっけ。・・・思い出せない。面影は残っているんだけど・・・」
「でも、ヒナさんって・・・そんな過去があったんですね。」
もちろん、歩はヒナギクの両親が今・・・ここの家に住んでいる人ではないことを、初めて知るのであった。
「その男の子は、とてもかっこよかったな・・・」
「へえ、私もその男の子みたいな人に出会いたいですね。」
ちなみに、ヒナギクはその相手がハヤテであることは気づいていない。面影などは残っているが、それがハヤテであることは気づいていなかった。
「もう、10年前のコトよ。どんな男の子でも、かっこよく思えた頃。・・・その中でも、あの人はとてもかっこよかった。それだけは言えるわね。」
「はあん、私もそんな恋がしたあい!」
「だったら、ハヤテくんを早く口説き落とさなきゃね。うふふ。」
歩はクッキーを食べながら、ハヤテとの甘い恋の妄想をしている。そんなコトが、見ているヒナギクでも分かった。
「あ、歩・・・別に、そんなに妄想を働かせなくても良いのよ。・・・ね。」
「・・・えっ?」
「ほっ。こっちの世界に帰ってきてくれたようね。」
「・・・えっ、私、今・・・呼ばれていたんですか?」
と、そんな返事が返ってくることにヒナギクはがくっとした。同時に、歩のもう総力の凄さを実感する。
「ヒナさん。で、そのあと・・・その男の子に、誕生日プレゼントをもらったんですか?」
「まあ、それは今から話すから。そんなにせかさないで。」
ヒナギクがその後について話しかける直前だった。ヒナギクの携帯の着メロが鳴る。
「あら、誰かしら・・・」
ヒナギクは机の上にある携帯をとって、見てみると“瀬川泉”の文字があった。
「い、泉・・・?なにかあったのかしら。」
何か嫌な予感がしながらも、電話に出る。
「もしもし、ヒナギクだけど。・・・泉、なにかあったの?」
「ヒナちゃん!どうかね?お暇かね?」
「な、なによ。いきなり・・・私を巻き込もうとする出だしは。」
「いやいや。お暇かな~と思いまして。」
そのフレーズが嫌な予感を倍増させるのよと、ヒナギクの表情は少しずつ怒っているように見えたが、
「今、歩と一緒に私の部屋にいるんだけど。」
「へえ、歩ちゃんと一緒にベッドの上なんだね。」
「な、なんでベッドの上になるのよ!」
泉は少し百合チックなコトを言ってみたりして、顔を見ては言えないようなコトを電話で言ってみているのだ。
「ただ、歩と一緒にお茶しているんだから!まあ、私の初恋の話をしているんだけど。」
のちに、この言葉を言うべきではなかったと後悔をする。
「えええっ!ヒ、ヒナちゃんの初恋!!え、えええっ!!ヒナちゃんって、恋とかしたことあったの!?」
「な、なによ!その『恋愛には無縁だ』みたいな言葉は・・・!!」
「だって、いっつもバレンタインデーには、たくさんの女子からチョコレートをもらってたいたじゃない!な、なのに・・・」
「わ、私は今・・・」
と、そこで言葉を止めた。「ハヤテのコトが好き」というコトは、安易に他人に知ってほしくなかった。そう、今そばにいる歩以外には。それに、泉に話せば美希や理沙に話が伝わって、たちまち学院中に広まってしまうと悟ったから。
「えっ?私は今・・・なに?」
「・・・な、なんでもないわよ!!」
「ひえええっ!」
電話の向こうの泉の声は、明らかにヒナギクの声におびえており、涙声になっている。
「きょ、今日のヒナちゃんは怖いよお!」
「・・・で、何で電話をかけてきたのよ。なんか、“お暇かね?”とか言っていたけど。」
「・・・」
まだ泉は、さっきのヒナギクの声におびえており・・・すぐに返事をできなかった。
「い、泉・・・ご、ごめんね。さ、さっきは・・・怒鳴っちゃったりして。」
「・・・にゃははっ。」
「えっ?」
「別に、ヒナちゃんに怒られるのは慣れているんだから、そこまで怖くはなかったのだ。」
「・・・そう。」
「あっ、それなんだけど・・・ヒナちゃんの初恋の話、ぜひ私にも聞かせてほしいな。美希ちゃんと理沙ちんも混ぜて。」
ヒナギクは返事をできなかった。やっぱり・・・あの言葉を言ったことは、とてもまずかったと後悔していた。
「うん・・・どうしようかしら。」
「にゃははっ。いいんじゃないかな?」
「・・・」
よく考えた。今、こうして断ったとしても・・・後で攻められるのは目に見えている。なら、今・・・歩もいるが話したほうがいいだろうと。
「分かったわ。・・・で、今・・・泉はどこにいるの?やっぱり家?」
「いえいえ。今、動画研究部の部室にいるのだ。」
「えっ、なんで?」
(ていうか、絶対に今日・・・私のコトについて何か探るって、あの3人のコトだから決めていたんじゃないの?)
ヒナギクはさっそく、的中な推理を自分の中にしながらも泉の要望に応えることに決めた。
「まあまあ、部活を入れておいたのだ。」
「ふうん。じゃあ、今から行くわ。歩も一緒に連れて行くけど、いいかしら?」
「ぜ~んぜんかまわないのだ。それじゃ、早く来てね~。」
電話を切り、歩に話す。
「そ、そういうコトになっちゃったみたいだから、この続きは泉たちのトコロに行ってから話すことにするわ。」
「・・・ふえっ?ふぃ、ふぃいでぇすぅよぉ。」
歩は電話の間、出されていたクッキーをずっと食べていたようであり、この時も口にクッキーを食われていたままであった。
「・・・話すときは、口の中の物を飲み込んでからしゃべってね。歩。」
「・・・ごくん。はい!」
「まったく、泉ったら・・・なんで、私の初恋バナシなんて聞きたいのかしら。」
「それは、ヒナさんが白皇学院で人気の女子生徒会長だからじゃないですか。その初恋の話は、男女問わず誰でも興味持ちますよ。きっと、ハヤテくんでも。」
「ハ、ハヤテくんでも・・・」
ハヤテの優しい顔が、ヒナギクの頭の中に駆けめぐる。
「・・・」
「ど、どうしたんですか?ヒナさん・・・」
ヒナギクは無表情でただ下を向いて考えている。
(まさか、ね・・・)
「なんでもないわよ。そうね・・・ハヤテくんでも興味を持つかもね。じゃあ、ちょっと制服に着替えるから。」
「はい。」
ヒナギクは制服に着替えて、歩は普段着のままで白皇学院に向かうのであった。
いつ見ても広い白皇学院。
その白皇学院だからこそ小さいと言える部室がある。ヒナギクと歩は泉たちが入部している動画研究部の部室の前にいた。
「こ、これが・・・動画研究部ですか。」
「そうよ。」
「へえ・・・個性的なトコロなんですね。」
個性的ときたか・・・とヒナギクは思っていたが、そう言わざるを得ないような見た目なのだからしょうがない。
「と、とにかく入るわよ。」
ヒナギクは部室のドアを開く。
すると、中には泉、美希、理沙のほかに・・・なんと千桜がいた。
「いらっしゃ~い!」
泉、美希、理沙の3人で出迎えをする。
「泉・・・私の初恋の話を聞きたいとかで招いたのね。」
と、そう言うだけでヒナギクは完全に千桜の方に歩いていた。
「ねえ、ハル子。」
「な、なんでしょうか。会長。」
「なんであなたまでが、ここにいるのかしら・・・?」
「い、いえ・・・愛歌さんが会長の初恋の話を、瀬川さんたちの動画研究部でしてくれると聞いたので。」
「ふうん・・・」
ヒナギクは腕を組んで、千桜の顔を凝視している。
「・・・な、なんですか?」
「あなた、こういうのに興味があったの・・・」
ヒナギクの目線は静かながらに、とても鋭い視線であることを千桜は感づいていた。
(だ、だって・・・ヒナの初恋の話なんでしょ?だったら、聞き逃さないわけにいかないじゃない。)
「ま、まあ・・・私にもそういう興味はあります。と、とくに・・・会長であるあなたの初恋は。」
「なるほどね。歩。やっぱり、私の初恋は多くの人に関心を持たれるようね。千桜まで私の初恋に興味があるって。」
そう、ヒナギクの言い方はまるで・・・
(私が、まったく恋愛に興味がない女子高生だと思ってるじゃないか!私だって、しゃくがんの・・・みたいな、そういうライトノベルだって読むんだぞ!)
逆に千桜の方が目線が鋭くなっていた。
「でも、会長の初恋とは・・・いったい、何年前の話なんですか?」
「えっ、10年前の話だけど・・・」
「な、なるほど・・・10年前ですか。」
(って、10年前の初恋じゃ・・・あんまり、今には関係ないだろ!な、なんか・・・ヒナの顔が赤くなっている!?こんなヒナの表情は、無性にかわいい。)
千桜は元々読んでいたライトノベルの挿絵を思い出し、まるでその挿絵のようにヒナギクはかわいいと思っていた。
「・・・と、ところで・・・ヒナの連れている私服の女性は誰ですか?」
「・・・ん?あっ、この子は私の友人の西沢歩さん。」
「に、西沢歩です!」
いきなり千桜に紹介されてしまったため、少しおどおどしながら挨拶をする歩。
「春風千桜です。生徒会の書記を務めています。」
(う~ん、さすがはヒナの友人だけある。この子のおどおどした表情も、とってもかわいいじゃない。)
口と心ではまるで違うような中身がある千桜だが、それに誰も気づいてはいなかった。
「ヒナちゃん。それで、ヒナちゃんの10年前の初恋ってどんな話なの~?」
泉はのんびり口調で本題に入ってくる。
「ほう、そういえば泉の話によると、そこのお嬢さんに少し話していたようだったな。」
「そうだな。ちょっとだけ、歩くんから離しを聞いてみるか。」
先に話したのが美希で、後に話したのが理沙である。2人とも、ヒナギクの初恋の話に興味津々である。
「えっと、私は聞いた話では・・・」
歩は3人娘にひそひそ話をするように小さい声で話している。
「歩。あんまり、自分で手を加えないでね。」
何か誤解のあるようなことを言われる可能性があるので、ヒナギクは念を押して歩に言った。千桜はこういうときは、あまり介入しなかった。
「しかし、会長にもそのような過去があるとは・・・驚きですね。」
「な、なによ・・・人が恋の一つでもしたことがないとか、そんなコトを言っているように聞こえるんだけど。」
「・・・」
(だって、ヒナがさっきそういう風に言っていたじゃないか!)
千桜はメガネを一回動かして、ヒナギクに負けない鋭い視線を送った。
「・・・」
「ハ、ハル子・・・?」
「・・・なんでもありません。早く、会長の初恋の話を聞いてみたいのですが。」
「わ、分かったわよ。」
ヒナギクが「コホン!」と言うと、歩も3人娘もヒナギクの方に注目した。
「じゃあ、泉たちは歩から話を聞いたのね?」
「了解なのだ~。」
「・・・そう。美希も理沙も分かったようだし、それじゃ・・・話の続きをするわよ。」
まあ、ヒナギクの記憶も鮮明に残っているわけではない。なぜなら、初恋の相手がハヤテであると気づいていないから。
そんなこんなであるが、ヒナギクは再び自分の初恋の話を始めた。
vol.3に続く。ハヤテからもらったプレゼントとは?
そして、ヒナギクの心の中では・・・何が動き出すのか。vol.3をお楽しみに。
そんなコトを、曖昧な記憶の中・・・ヒナギクは歩に初恋の話をしていた。
「へえ、その男の子って・・・ヒナさんに優しいんですね。」
「うん。・・・誰だったっけ。・・・思い出せない。面影は残っているんだけど・・・」
「でも、ヒナさんって・・・そんな過去があったんですね。」
もちろん、歩はヒナギクの両親が今・・・ここの家に住んでいる人ではないことを、初めて知るのであった。
「その男の子は、とてもかっこよかったな・・・」
「へえ、私もその男の子みたいな人に出会いたいですね。」
ちなみに、ヒナギクはその相手がハヤテであることは気づいていない。面影などは残っているが、それがハヤテであることは気づいていなかった。
「もう、10年前のコトよ。どんな男の子でも、かっこよく思えた頃。・・・その中でも、あの人はとてもかっこよかった。それだけは言えるわね。」
「はあん、私もそんな恋がしたあい!」
「だったら、ハヤテくんを早く口説き落とさなきゃね。うふふ。」
歩はクッキーを食べながら、ハヤテとの甘い恋の妄想をしている。そんなコトが、見ているヒナギクでも分かった。
「あ、歩・・・別に、そんなに妄想を働かせなくても良いのよ。・・・ね。」
「・・・えっ?」
「ほっ。こっちの世界に帰ってきてくれたようね。」
「・・・えっ、私、今・・・呼ばれていたんですか?」
と、そんな返事が返ってくることにヒナギクはがくっとした。同時に、歩のもう総力の凄さを実感する。
「ヒナさん。で、そのあと・・・その男の子に、誕生日プレゼントをもらったんですか?」
「まあ、それは今から話すから。そんなにせかさないで。」
ヒナギクがその後について話しかける直前だった。ヒナギクの携帯の着メロが鳴る。
「あら、誰かしら・・・」
ヒナギクは机の上にある携帯をとって、見てみると“瀬川泉”の文字があった。
「い、泉・・・?なにかあったのかしら。」
何か嫌な予感がしながらも、電話に出る。
「もしもし、ヒナギクだけど。・・・泉、なにかあったの?」
「ヒナちゃん!どうかね?お暇かね?」
「な、なによ。いきなり・・・私を巻き込もうとする出だしは。」
「いやいや。お暇かな~と思いまして。」
そのフレーズが嫌な予感を倍増させるのよと、ヒナギクの表情は少しずつ怒っているように見えたが、
「今、歩と一緒に私の部屋にいるんだけど。」
「へえ、歩ちゃんと一緒にベッドの上なんだね。」
「な、なんでベッドの上になるのよ!」
泉は少し百合チックなコトを言ってみたりして、顔を見ては言えないようなコトを電話で言ってみているのだ。
「ただ、歩と一緒にお茶しているんだから!まあ、私の初恋の話をしているんだけど。」
のちに、この言葉を言うべきではなかったと後悔をする。
「えええっ!ヒ、ヒナちゃんの初恋!!え、えええっ!!ヒナちゃんって、恋とかしたことあったの!?」
「な、なによ!その『恋愛には無縁だ』みたいな言葉は・・・!!」
「だって、いっつもバレンタインデーには、たくさんの女子からチョコレートをもらってたいたじゃない!な、なのに・・・」
「わ、私は今・・・」
と、そこで言葉を止めた。「ハヤテのコトが好き」というコトは、安易に他人に知ってほしくなかった。そう、今そばにいる歩以外には。それに、泉に話せば美希や理沙に話が伝わって、たちまち学院中に広まってしまうと悟ったから。
「えっ?私は今・・・なに?」
「・・・な、なんでもないわよ!!」
「ひえええっ!」
電話の向こうの泉の声は、明らかにヒナギクの声におびえており、涙声になっている。
「きょ、今日のヒナちゃんは怖いよお!」
「・・・で、何で電話をかけてきたのよ。なんか、“お暇かね?”とか言っていたけど。」
「・・・」
まだ泉は、さっきのヒナギクの声におびえており・・・すぐに返事をできなかった。
「い、泉・・・ご、ごめんね。さ、さっきは・・・怒鳴っちゃったりして。」
「・・・にゃははっ。」
「えっ?」
「別に、ヒナちゃんに怒られるのは慣れているんだから、そこまで怖くはなかったのだ。」
「・・・そう。」
「あっ、それなんだけど・・・ヒナちゃんの初恋の話、ぜひ私にも聞かせてほしいな。美希ちゃんと理沙ちんも混ぜて。」
ヒナギクは返事をできなかった。やっぱり・・・あの言葉を言ったことは、とてもまずかったと後悔していた。
「うん・・・どうしようかしら。」
「にゃははっ。いいんじゃないかな?」
「・・・」
よく考えた。今、こうして断ったとしても・・・後で攻められるのは目に見えている。なら、今・・・歩もいるが話したほうがいいだろうと。
「分かったわ。・・・で、今・・・泉はどこにいるの?やっぱり家?」
「いえいえ。今、動画研究部の部室にいるのだ。」
「えっ、なんで?」
(ていうか、絶対に今日・・・私のコトについて何か探るって、あの3人のコトだから決めていたんじゃないの?)
ヒナギクはさっそく、的中な推理を自分の中にしながらも泉の要望に応えることに決めた。
「まあまあ、部活を入れておいたのだ。」
「ふうん。じゃあ、今から行くわ。歩も一緒に連れて行くけど、いいかしら?」
「ぜ~んぜんかまわないのだ。それじゃ、早く来てね~。」
電話を切り、歩に話す。
「そ、そういうコトになっちゃったみたいだから、この続きは泉たちのトコロに行ってから話すことにするわ。」
「・・・ふえっ?ふぃ、ふぃいでぇすぅよぉ。」
歩は電話の間、出されていたクッキーをずっと食べていたようであり、この時も口にクッキーを食われていたままであった。
「・・・話すときは、口の中の物を飲み込んでからしゃべってね。歩。」
「・・・ごくん。はい!」
「まったく、泉ったら・・・なんで、私の初恋バナシなんて聞きたいのかしら。」
「それは、ヒナさんが白皇学院で人気の女子生徒会長だからじゃないですか。その初恋の話は、男女問わず誰でも興味持ちますよ。きっと、ハヤテくんでも。」
「ハ、ハヤテくんでも・・・」
ハヤテの優しい顔が、ヒナギクの頭の中に駆けめぐる。
「・・・」
「ど、どうしたんですか?ヒナさん・・・」
ヒナギクは無表情でただ下を向いて考えている。
(まさか、ね・・・)
「なんでもないわよ。そうね・・・ハヤテくんでも興味を持つかもね。じゃあ、ちょっと制服に着替えるから。」
「はい。」
ヒナギクは制服に着替えて、歩は普段着のままで白皇学院に向かうのであった。
いつ見ても広い白皇学院。
その白皇学院だからこそ小さいと言える部室がある。ヒナギクと歩は泉たちが入部している動画研究部の部室の前にいた。
「こ、これが・・・動画研究部ですか。」
「そうよ。」
「へえ・・・個性的なトコロなんですね。」
個性的ときたか・・・とヒナギクは思っていたが、そう言わざるを得ないような見た目なのだからしょうがない。
「と、とにかく入るわよ。」
ヒナギクは部室のドアを開く。
すると、中には泉、美希、理沙のほかに・・・なんと千桜がいた。
「いらっしゃ~い!」
泉、美希、理沙の3人で出迎えをする。
「泉・・・私の初恋の話を聞きたいとかで招いたのね。」
と、そう言うだけでヒナギクは完全に千桜の方に歩いていた。
「ねえ、ハル子。」
「な、なんでしょうか。会長。」
「なんであなたまでが、ここにいるのかしら・・・?」
「い、いえ・・・愛歌さんが会長の初恋の話を、瀬川さんたちの動画研究部でしてくれると聞いたので。」
「ふうん・・・」
ヒナギクは腕を組んで、千桜の顔を凝視している。
「・・・な、なんですか?」
「あなた、こういうのに興味があったの・・・」
ヒナギクの目線は静かながらに、とても鋭い視線であることを千桜は感づいていた。
(だ、だって・・・ヒナの初恋の話なんでしょ?だったら、聞き逃さないわけにいかないじゃない。)
「ま、まあ・・・私にもそういう興味はあります。と、とくに・・・会長であるあなたの初恋は。」
「なるほどね。歩。やっぱり、私の初恋は多くの人に関心を持たれるようね。千桜まで私の初恋に興味があるって。」
そう、ヒナギクの言い方はまるで・・・
(私が、まったく恋愛に興味がない女子高生だと思ってるじゃないか!私だって、しゃくがんの・・・みたいな、そういうライトノベルだって読むんだぞ!)
逆に千桜の方が目線が鋭くなっていた。
「でも、会長の初恋とは・・・いったい、何年前の話なんですか?」
「えっ、10年前の話だけど・・・」
「な、なるほど・・・10年前ですか。」
(って、10年前の初恋じゃ・・・あんまり、今には関係ないだろ!な、なんか・・・ヒナの顔が赤くなっている!?こんなヒナの表情は、無性にかわいい。)
千桜は元々読んでいたライトノベルの挿絵を思い出し、まるでその挿絵のようにヒナギクはかわいいと思っていた。
「・・・と、ところで・・・ヒナの連れている私服の女性は誰ですか?」
「・・・ん?あっ、この子は私の友人の西沢歩さん。」
「に、西沢歩です!」
いきなり千桜に紹介されてしまったため、少しおどおどしながら挨拶をする歩。
「春風千桜です。生徒会の書記を務めています。」
(う~ん、さすがはヒナの友人だけある。この子のおどおどした表情も、とってもかわいいじゃない。)
口と心ではまるで違うような中身がある千桜だが、それに誰も気づいてはいなかった。
「ヒナちゃん。それで、ヒナちゃんの10年前の初恋ってどんな話なの~?」
泉はのんびり口調で本題に入ってくる。
「ほう、そういえば泉の話によると、そこのお嬢さんに少し話していたようだったな。」
「そうだな。ちょっとだけ、歩くんから離しを聞いてみるか。」
先に話したのが美希で、後に話したのが理沙である。2人とも、ヒナギクの初恋の話に興味津々である。
「えっと、私は聞いた話では・・・」
歩は3人娘にひそひそ話をするように小さい声で話している。
「歩。あんまり、自分で手を加えないでね。」
何か誤解のあるようなことを言われる可能性があるので、ヒナギクは念を押して歩に言った。千桜はこういうときは、あまり介入しなかった。
「しかし、会長にもそのような過去があるとは・・・驚きですね。」
「な、なによ・・・人が恋の一つでもしたことがないとか、そんなコトを言っているように聞こえるんだけど。」
「・・・」
(だって、ヒナがさっきそういう風に言っていたじゃないか!)
千桜はメガネを一回動かして、ヒナギクに負けない鋭い視線を送った。
「・・・」
「ハ、ハル子・・・?」
「・・・なんでもありません。早く、会長の初恋の話を聞いてみたいのですが。」
「わ、分かったわよ。」
ヒナギクが「コホン!」と言うと、歩も3人娘もヒナギクの方に注目した。
「じゃあ、泉たちは歩から話を聞いたのね?」
「了解なのだ~。」
「・・・そう。美希も理沙も分かったようだし、それじゃ・・・話の続きをするわよ。」
まあ、ヒナギクの記憶も鮮明に残っているわけではない。なぜなら、初恋の相手がハヤテであると気づいていないから。
そんなこんなであるが、ヒナギクは再び自分の初恋の話を始めた。
vol.3に続く。ハヤテからもらったプレゼントとは?
そして、ヒナギクの心の中では・・・何が動き出すのか。vol.3をお楽しみに。
この記事のトラックバックURL
http://2ndbutlershun.blog60.fc2.com/tb.php/194-7b746320
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック