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開設10周年!(2018/10/4)日記と音楽感想、アニメ感想を中心に更新しています。リンク&トラックバックなどはフリーです。

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さて、SS『Love Ling』vol.6です。
俊の考える作戦とは・・・?ハヤテとアテネの一夜と、ナギとヒナハムと俊の一夜。

ハヤテとアテネは愛を深め・・・そして、ナギとヒナハムと俊は星空の下でゆっくりと。
少しほのぼのしている回かな。今回は。前回と同じぐらいのボリュームです。

そして、最終vol.7へと繋がっていく・・・。

それでは、夜のvol.6をどうぞ!
~SELL 9 赤炎~

 何事もなく夜が過ぎた・・・三千院家。
 ハヤテとアテネは二人同じ部屋にいた。
 「アーたん・・・どうかしたの?なんか、ぱっとしない表情だけど・・・」
 DVDを撮ったときから・・・アテネの表情は笑顔とぱっとしない表情が交互に出ていた。窓から外の景色を眺めながら・・・ずっと。
 「い、いえ・・・なんでもないわよ。・・・ハヤテ。」
 ハヤテはベッドの上に寝そべっており・・・窓のそばにいるアテネをずっと見ている。アテネは窓の反射からそれを見たのか、頬を赤くして・・・口元をにやけたりしながらハヤテの方に振り返った。
 「ねえ、ハヤテ・・・あの時のコトだけど。」
 「なあに?あの時のコトって・・・」
 アテネは右手の人差し指を唇に触れさせながら・・・ハヤテのそばに寄った。
 「私と結婚すると・・・そう言ってくれたわよね。」
 「うん・・・そうだよ。」
 「でも、結婚って・・・まだ、あなたと1年半は結婚できないのよ。それなのに、ハヤテったら・・・」
 しかし、ハヤテは笑みのままでアテネの体を強引に自分の方に寄せる。
 「アーたん。それだけ・・・アーたんのコトが好きなんだ。そう思っていてくれれば・・・アーたんだって納得してくれるよね?」
 「ハヤテ・・・」
 「アーたん。こうして近くで見ると・・・かわいいね。」
 「・・・ばかっ!もう・・・そんなに優しく言わないで。三千院家の執事になったから・・・そんなに優しく慣れたのね。少しは・・・あの三千院ナギたちにも、お礼でも言っておいた方がいいかしら。ここまで優しくしてくれた、お・れ・い。」
 「でも・・・アーたんも、女の子っぽくなったな・・・」
 しかし、アテネはゆっくりとハヤテの頬に手を当てた。
 「なに、バカなことを言っているのよ。どうして、私が女の子っぽくなったですって・・・?」
 「だって、昔は敬語ばっかり使っていたじゃん。でも、今は・・・なんか、気軽に話せて・・・アーたんが見えてる気がするんだ。だから、すごく・・・嬉しくて。」
 「ばかばかばかっ・・・」
 と言いながらも、アテネの心情はとても嬉しい気持ちで一杯だった。ハヤテにここまで優しく昔は言われていただろうか。逆に、昔はハヤテに優しくしていた気がした。
 「本当にあなたは素直に感情を出すときは出してしまうのね・・・ばかなんだから。あのDVD・・・三千院ナギたちには刺激が強すぎたんじゃない?」
 「いいんだよ。」
 「えっ?何が?」
 「僕たちが愛し合っているコトは・・・変わりないでしょ?どうせ、あのかっこいい美青年さんよりも、僕の方が絶対にいいよね。」
 「・・・」
 しかし、迷いはあった。あの時に去ったあの顔・・・昔では見られなかった顔が見れたこと。昔がああだったら・・・この男のそばに、こうして今はいなかったんだろうと。そう思うと、なんだか複雑な思いが入れ違いに交差していた。
 「アーたん?どうかしたの?」
 「ハヤテ・・・これから、私を気持ちよくさせなさい。」
 「・・・なにを?」
 部屋はうす暗く・・・ベッドの傍らにある一つの少し暗めの黄色い電球一つが、少し広めの部屋に明かりを灯していた。
 「・・・全て。」
 「誰の?」
 「ばかっ・・・私とハヤテ。方法はいくらでもあるわよ・・・ハヤテ。」
 「アーたん。」
 ハヤテはアテネと唇を重ねて・・・ベッドにアテネを寝かせた。
 「ハヤテ・・・」
 「アーたんの全てを・・・僕にくれるんだよね。・・・ちゅっ。」
 「・・・あなただったらいいわよ。・・・ちゅっ。」
 そして、ハヤテはアテネに手をかけようとした・・・その瞬間だった。
 『あ、あの・・・』
 「だ、だれ?」
 『アテネ様・・・鈴宮俊という方から、小包をいただいているのですが・・・』
 「分かったわ。入れておいて。」
 そして、ガタンと一つの雑音を響かせて・・・それはたしかに、この部屋の中においてあった。
 「これ・・・なんだろうね。アーたん。」
 「ふ、ふん・・・シュンのコトだから、なにか・・・言いたいことでも好き勝手に入っているんじゃない?」
 「そうかな・・・あの人、すごく優しそうだけど。だって、三千院ナギお嬢様たちを助けてくれている人だ。そんなことはないよ。」
 「・・・ふうん、あの人のこと・・・やけに持ち上げているじゃない。」
 「だって、アーたんがかつて好きだった人でしょ?だったら、悪いことは言えないよ。ね、アーたん。」
 ハヤテは小包をゆっくりと開けてみる。
 「アーたん。それは・・・このDVDに入っているみたいだよ。」
 「ふうん・・・DVDで送ったから、DVDで返す・・・シュンらしいわね。」
 「アーたん。続きは・・・このDVDを見てからで良いかな。」
 「・・・いいわ。ハヤテがそう言うなら。」
 ハヤテは「ありがとう」と言う変わりに、アテネにキスをして・・・ハヤテはウインクをした。アテネはすっかりとハヤテとキスをするのを慣れてしまったせいか、頬を赤くする頻度も少なくなっていた。
 「さて、じゃあ・・・見ようか。」
 そして、ハヤテはDVDプレーヤーにDVDを入れ・・・大きなディスプレイに俊の姿が映し出される。
 『どうも、鈴宮俊です。えっと・・・はいはい。この度は、綾崎くんとアテネが結婚すると。おめでとうございます。』
 ディスプレイの中の俊は、ゆっくりとお辞儀をしていた。服装はスーツ姿で、場所はハヤテもアテネも知らない場所だった。
 『綾崎くんとアテネは10年の・・・付き合いになると。はい。やっぱり・・・結婚と言うからには、指輪が必要ですよね。でも、アテネは大事な指輪を・・・まあ、いろいろあって無くしてしまったんでしたね。』
 「シュン・・・」
 「アーたん?」
 「シュン・・・本当に私たちの婚約を喜んでいるみたい。」
 アテネはうっとり表情で、ディスプレイを見ていた。
 『あの後、俺はあの指輪の行方を調べたのですが・・・残念ですが、見つけることはできませんでした。しかし、俺は・・・とっておきの指輪を知り合いからもらったんです。』
 そして、その俊の横に・・・二つの指輪の写真が映し出された。その指輪は、いかにも高級感あふれていた。
 『たぶん、俺の横に・・・二つの指輪の写っている写真が出たと思います。この指輪・・・赤を基調としています。ルビーが限りなく使われており・・・この指輪を鑑定に出したんですよ。すると、この指輪・・・1000年来のヨーロッパの貴族が使われていたと言うんです。驚きですよね。』
 「たしかに、これは驚きだよね・・・アーたん。」
 「ええ。そうね・・・私も聞いたことがなかったわ。それが、この日本で見つかるなんてね。」
 アテネには・・・その指輪がどうなるかは想像できていた。
 『それで、この指輪・・・綾崎くんとアテネに渡そうと思ったんですが、どこからか情報が漏れてしまってね。多くの財閥がこの指輪を狙っているらしい。しかも、この指輪・・・どんな人たちの恋でも、必ず実という伝説があるんです。実際に、私たちにくれた夫婦は既に亡くなっていますが、夫婦円満で最期まで迎えられたそうです。』
 ハヤテには何とも思えなかったが・・・アテネはさすがに女性なのか、そちら方面には興味があったらしく、それに釘付けになってみていた。
 「・・・」
 「アーたん・・・」
 『そして、この指輪に・・・我が鈴宮家が主催するオークションにかけることになりました。なので、興味があれば・・・是非参加してほしいのですが。いや、むしろ・・・あなたたちにこの指輪は受け取ってほしい。』
 俊は、笑顔のままで何も表情を変えずに・・・話を続けた。
 『君たちはこれから・・・共に生きていくということ。その証に・・・この価値ある指輪をプレゼントしたいと思っています。この指輪・・・兆単位になってもおかしくないほどです。そして、それほどの金持ちが・・・そのオークションには集う。』
 そして、俊のいる部屋の窓から・・・一つの大きな建物が見えた。
 『あの建物で・・・明日の正午に開催されます。もちろん、誰もいなかったら・・・この鈴宮家が買い取り・・・まあ、自分自身なのですが・・・一応参加させていただくので。』
 最後に、再び・・・席に座った。
 『最後に。綾崎くんとアテネ。結婚・・・おめでとうございます。愛は、どんな過去があったとしても、今が大事であるとも思っています。それでは、幸せになってください。鈴宮俊でした。』
 そして、DVDは終わった。
 「・・・なによ。今の。」
 「・・・?」
 「どうして、ハヤテは“綾崎くん”で私は“アテネ”なの!あ、あり得ないわ!」
 「まあ、鈴宮さんも・・・アテネの昔の付き合いだから。別に、それぐらいは許しても良いんじゃないかな。」
 ハヤテはDVDを取り出して・・・ディスプレイの電源を切った。
 「・・・シュンもいろいろ考えているのね。あの指輪・・・手放さなくても良いのに。なんで、オークションをかけてでも誰かの手に渡ってほしいのかしら。」
 「さあ。誰かが幸せになってほしいから?しかも、やっぱり・・・アーたんのコトをちゃんと思っているからじゃないのかな。」
 「シュン・・・」
 「どうするの?明日・・・鈴宮さんのところのオークションに行く?」
 しかし、アテネは迷っている・・・
 「わ、私・・・」
 「・・・でも、アーたんがどんなに大きなお金を出してでも、僕と一緒にいたかったわけだよね。」
 「・・・!」
 たしかに、アテネは三千院家を自分の手中に収めてしまうほどだ・・・相当な大きな金があったのは間違いない。
 「ハヤテ・・・」
 「だったら、その誓いの証を・・・その大きなお金を出してもいいんじゃないかな。僕は、その指輪を・・・アーたんと一生つけてみたい。」
 その言葉を・・・真摯に受け止めたアテネ。
 「ハヤテ・・・」
 「ね。アーたん・・・僕たちも出てみようよ。そのオークション。アーたんだったら、絶対にオークションで買えるお金はあるんだから。」
 「だったら、約束して・・・!」
 「・・・なに?」
 アテネは涙を流して・・・ハヤテの顔を真剣に見る。
 「あの時は、お互いに好きで・・・でも、別れてしまった。今回は違うわよね。絶対に一緒にいられるわよね。」
 「・・・うん。」
 「今度は、いつでも会えるわよね・・・?」
 「・・・うん。」
 「だったら、約束して。私たちはもう・・・離ればなれじゃないって。それを、今・・・この身で見せてほしいの。」
 「この身で・・・」
 そう言うと、ハヤテはアテネを強引にベッドに寝かせた。
 「・・・」
 「ハヤテ・・・もっともっと・・・抱きしめて!」
 ハヤテは激しく・・・抱きしめる。
 「アーたん・・・」
 「私を・・・私を、気持ちよくして・・・!!」
 「・・・分かったよ。アーたん・・・」
 「あ、あああん・・・!ハ、ハヤテえええん!!あ、あああん!!」
 そして、その夜は・・・二人だけの夜を、この上ない・・・快感で味わった。それは、互いが求めれば求め合うほど・・・それは気持ちよかった。
 だが、それは・・・起こりうることだと俊が知っていることなんて、アテネには気づくことはできなかった。

~SELL 10 前夜~

 ところは、鈴宮邸。
俊は、オークションの準備をして・・・疲労がたまったせいか、少し涼しげな空気を味わうために、バルコニーで紅茶を楽しんでいた。
 「はあっ・・・疲れた。」
 「シュン様・・・紅茶は本当に冷たくてよろしかったのですか?」
 「ああ。今日は何かと疲れた・・・あの会場作りも、アテネに送ったDVDも・・・けっこう、PCでやるもんだな。」
 「そうですね。しかし、さすがシュン様。次期の当主のためであってか、手さばきなどが良く、ここまで準備できたのはシュン様のおかげです。」
 「別に、俺は普通にやっているだけだよ。・・・今日は、もう・・・終わりで良いから。ありがとう。」
 「・・・かしこまりました。」
 俊のそばにいた執事は・・・ゆっくりとその場から立ち去った。
 「・・・たしかに、疲れた。・・・アテネは、オークションに参加するだろうか・・・」
 俊の作戦とは、明日のオークションのことだった。もちろん、あの指輪は・・・俊が用意したオークションの会場に保管されている。
 「やっぱり、冷たい紅茶は美味しいな・・・」
 俊はアイスグラスへ並々に注がれた紅茶を、一気に半分ぐらい飲み干した。
 「はあっ・・・」
 そして、そんな俊を背後から迫る人物が・・・3人。
 「シュン・・・」
 「・・・あ、ナギさんにヒナギクさん・・・そして、歩さん。どうかしたんですか?」
 「いや、なんでもないんだが・・・ちょっと、シュンのトコロに行きたくてな。ちょっと足を運んでみたのだ。」
 「そうですか。・・・あ、アイスティーがありますが・・・あなたたちは飲みますか?」
 「じゃあ、お願いするよ。」
 俊は、アイスグラスを3つ持ってきて・・・既にポットの中に入っていた紅茶を、各々に並々に注いでいった。
 「シュン・・・」
 「なんですか?ナギさん。」
 「ハヤテを救うために・・・あんなにしてくれて、どうも・・・あ、ありがとう。」
 「・・・それは、君たちの家が戻ってきてからでいいですよ。」
 俊は、紅茶ガムシロップを入れて・・・レモン汁を少々入れて、スプーンでかき混ぜる。そして、各人に紅茶を差し出した。
 「はい、俺のオススメ紅茶です。さっぱりしていて美味しいですよ。」
 「うん・・・」
 ナギは勢いよく紅茶を飲む。ストローを刺していたが・・・ちゅ、ちゅ、と・・・勢いよく飲んでいた。
 「うん。美味しい。」
 「良かったです。」
 そんなコトを見ているヒナギクと歩・・・それを微笑ましく思っていた。
 「へえ、ナギちゃんもそんな風に可愛く言えるモノなんだね。」
 「ぶっ、な、何を言っているのだ!わ、私だって・・・ありがたいときは、ありがとうって言えるんだからな。そ、そんなに人をバカにしたような口調で言うのではない!!この、ハムスターごときが!!」
 「な、なんでそうなっちゃうのかな・・・まあ、別に良いけど。」
 「わ、私だって女の子なのだぞ!だったら、かわいらしく見せても・・・い、いいんじゃないのか?」
 「それをハヤテくんにもっと見せていれば・・・気の迷いとかを起こさせていたんじゃないかな?あああっ、私ももっとアプローチすれば良かったかな・・・」
 ナギはその台詞の一部に・・・なにかあると感じていた。
 「も、もっと・・・?それはどういうコトなのだ!何かアプローチをしたのか!?」
 「えっ、ハヤテくんが私と一緒の高校だったときは・・・お昼ご飯に、毎日お弁当を作ってあげていたんだよ。ほら、ハヤテくん・・・親の借金のためにバイトとかして、それにそんなにお金がなかったから。」
 「お、おべんとう・・・?」
 「はあん・・・私が作ったお弁当を、ハヤテくんは美味しく食べてくれていたから・・・しかも、私と同じお弁当なんだよ。ふふん・・・うらやましいでしょ。」
 「む、むむむ・・・!」
 ナギも顔を少し赤くして・・・少し涙目になっていたが、ヒナギクもその話しに少なからず動揺していた。
 「学校の屋上で・・・二人きりで。ハヤテくんの横に座って・・・お弁当を食べていた毎日。はあん・・・もっと一緒にいたかったなあん。」
 「ハムスター・・・おまえ、ハヤテとそんなコトを去年の4月からずっとやっていたんだったら、それで十分だと思え!!」
 「べ、別に良いんじゃないかな!そんなこと・・・もっとハヤテくんといたかったって気持ちは、ナギちゃんだって一緒なんじゃないかな!」
 「お、お弁当なんて・・・そんなの私の足元にも及ばないな!」
 「ど、どういうコトかな!?それって、どういうコトかな!?」
 「私は・・・私は、今は毎日ひとつ屋根の下でハヤテと暮らしていて・・・この前は、ベッドでいたずらをされたんだからな!!」
 「え、えええっ!!」
 歩はその言葉に叫び・・・そして、ずっと紅茶を飲んでいたヒナギクは、紅茶を口から吹き出してしまった。しかも、それは俊にかかる。
 「あ、あはは・・・綾崎くんも歩さんにそのようなコトをされていたんですね。学校の屋上で・・・二人きりで彼女が作ったお弁当を食べるんですか。いや・・・ロマンティックあふれていますね。」
 「でしょでしょ!」
 「ええ・・・女の子が、男の子に作ってくるお弁当というのは・・・遠回しに、自分が好きであると言っているものだと・・・どこかに書いてあったことを覚えています。歩さんが綾崎くんに作ったこと。それは、やはり・・・彼が好きだからですよね。」
 「うんうん。ほら、やっぱりシュンくんは分かってくれるんだよ。」
 「でも、綾崎くんは・・・ちょっと天然さんなのかな。それを、毎日のごとくやってきてしまったため、まあ・・・歩さんに感謝の気持ちが一杯で、好きだという気持ちを逆に気づいてあげられなかったんでしょうか。」
 「やっぱり、世の女性に好かれる美少年に言うコトは・・・説得力があるよね。・・・それに、どこかの令嬢と違って、ちゃんとしたコトの言える当主さんでもあるんだから。」
 もちろん、どこかの令嬢は・・・すぐそばにいる紅茶を飲む金髪の少女なのだが。
 「それに、言い方が優しいよね・・・はあん、もっと言われてみたい・・・」
 「むむむっ、ハヤテが好きなら・・・シュンにそこまでイチャイチャしなくてもいいんじゃないのか?ったく、シュン・・・ハムスターばかりフォローするのではない。私だってフォローしろ。」
 「ど、どれだけかかあ天下っぽい感じなんですか・・・」
 「か、かかあでんか・・・?」
 その言葉は早すぎたか・・・しかし、俊は口ごもりながらもナギに言った。
 「いや、かかあ天下とは・・・いわゆる、亭主関白の逆バージョンのようなモノですよ。そうですね、簡単に言えば・・・奥さんが一番家の中の権力を握っていると言えば、間違いはないでしょうか。」
 「そ、そのかかあ天下みたいだと言っているのか・・・?」
 「いや、ナギさんはまだ13歳ですし・・・人にわがままを言っても、かわいらしいので許してもらえますが、大人になると・・・わがままばかり言っていると、ちょっと・・・」
 「ま、まさか・・・そのかかあ天下っぷりを発揮してしまったために、ハヤテはあいつの元に行ってしまったのか・・・?」
 「だ、大丈夫ですって・・・そのかかあ天下っぷりが突然消えてしまう方が、綾崎くんだって気持ち悪いと思ってしまうのですから。ナギさんはナギさんらしく・・・今までのままでもよろしいのではありませんか?」
 その美少年の放つ言葉は、ナギの心をも揺るがした。
 「で、でも・・・ハヤテくんにはそれでも許してくれるけど、私にバカハムスターはないんじゃないかな!?」
 「だって、ハヤテにお弁当なんて・・・あああっ、私もハヤテにお弁当をあげてみたいのだ!」
 「ナギちゃん・・・できるの?」
 「わ、私をバカにするな!私はこう見えても・・・三千院家の次期当主である三千院ナギなのだぞ!」
 だが、そんな話をくすくす笑うヒナギク。
 「ふ、ふふふっ・・・」
 「な、なんなのだ!」
 「なんだか、あなたたちを見ていると・・・なんか、おかしくて。」
 「な、なんなのだ・・・ハヤテにいっつも怒ってばかりして。そんな態度だと、ハヤテに嫌われる一千をたどるだけだぞ!」
 「なによ!」
 ヒナギクはナギの頬をつねる。それは、ストローを口にくわえたまま。
 『むにゅっ。』
 「い、いたい!あっ、い、いたい!!や、やめてくれえええっ!!」
 「私だってね、バレンタインデーの時に・・・たくさんの女子にたくさんのチョコレートをもらうけどね、それでも女の子なんだから!ハヤテくんに優しくしてみたいときだってあるんだからね!」
 「わ、分かったから・・・むにゅっていってるから、いたいから・・・早く放してくれ。い、いたいんだから・・・!!」
 ナギは完全に涙を流しており、ヒナギクは慌ててナギの頬を放した。そして、放した瞬間にナギの目はヒナギクに向けて鋭い眼光をあてた。
 「う、うううっ・・・」
 「ちょっと、ケンカはやめてくださいよ。そんなことじゃ・・・綾崎くんは戻ってきません。」
 「だって、ヒナギクが急につねるから・・・」
 「ナギが悪いんでしょ!」
 「これこれ。やめてください。」
 俊は、ナギの頬にゆっくりと手を当てる。
 「痛かったですか?」
 「うん・・・」
 「そうですか。・・・ほら、こうしてなでれば・・・痛いのなんて飛んじゃいますから。大丈夫ですよ。」
 俊はゆっくりとナギの頬をなでる。ナギはそれにうっとりしてしまった。そして、俊はヒナギクに対して怒ることもない。
 「まあまあ、ナギさんも・・・まだまだ子どもな部分のありますからね。それに、ヒナギクさん・・・あなたにも経験とかはあるんじゃないんですか?急に態度を変えて、綾崎くんに変だと思われたことを・・・」
 「えっ・・・」
 そう言えば、そんな心当たりはあった。自分が優しくなろうとしたあの時に・・・ハヤテにそんな風に思われていたかもしれないというあの時のコトを。
 「あ、あるかもしれない・・・」
 「だったら、別に・・・そのままでよろしいのでは。とにかく、アテネが権力を持っている今の状態を元に戻さなければ、あなたたちの誰かの恋は芽生えることはありません。とにかくは、明日のオークションを成功させなければいけませんね。」
 「・・・」
 バルコニーから、周りの景色を眺める俊。それを見ているヒナギクは・・・くすっ。少し笑って、
 「そういえば・・・ハヤテくんと一緒に一番長くいるのって、歩なんだよね。そう思うと、お弁当の話しも納得できるかも。なんだか、私より全然先に進んでいるって感じで。しかも、ナギだって・・・今はひとつ屋根の下で暮らしているんだから、それだけでもうらやましいって思えるわよ。」
 「ヒナさん・・・」
 「私って、ハヤテくんに何かしたかしら・・・?誕生日の日に二人きりになったことぐらいなのかしらね。」
 「えっ、それってすごいコトじゃないですか!」
 歩の眼は明らかに「うらやましさ」が募っているような眼光を放っていた。
 「えっ・・・?」
 「誕生日の日に・・・ハヤテくんと一緒にいられるなんて、これ以上に嬉しいことはないじゃないですか!もちろん、プレゼントはもらったんですよね?」
 「え、ええ・・・彼らしく、手作りのクッキーだったけど。」
 その時、ナギは『ドキッ!!』とした。ナギは歩とバイトをしているときに、ハヤテとのキスは『手作りのクッキーを食べる』コトが、歩流のキスであることをナギは認識していたからだ。
 「はあん、ハヤテくんのクッキー・・・美味しいですよね。」
 「・・・うん。美味しかった。」
 「うらやましいな・・・ヒナさん。」
 「でも、歩ほどじゃないって。・・・ハヤテくんに一番近いのは、歩か・・・ナギのどちらかだと思ってる。私なんて・・・でも、私もハヤテくんと一緒にいたいな・・・」
 歩は紅茶をストローで全部飲みきり・・・そして、ヒナギクに言った。
 「そんなコトはありませんよ。私たちは・・・同じトコロに立っているんだと思ってます。それに、あのアテネという人も・・・私にとっては同じような感じの人にしか思えないんですよ。」
 「歩・・・」
 「ヒナさん。私たちは・・・ハヤテくんが共に好きな親友同士でしょ?それに、ライバルでもあるけど。」
 「・・・うん。」
 その話をただ聞いていた俊は、ナギたちの方にゆっくりと振り返った。
 「・・・どうやら、あなたたちに元の生活を戻すことに協力すること。その価値は十分にありそうです。そう、アテネだって・・・君たちと同じような存在ですよ。ただ、アテネは金持ちなだけであって。普通の女の子なんです・・・きっと。」
 「シュン・・・」
 「そのためには、やはり・・・明日のオークションは絶対に成功しなければいけませんね。それには、ナギさんたちの協力も必要ですね。」
 「・・・シュン。あの指輪のこと・・・なんだけど。あれって、本物なのか?」
 「・・・本物ですよ。」
 俊は確信できるようなものがあるのか・・・すっかりと落ち着いた表情で、ナギたちに接していた。
 「全ては本物のこと・・・ただし、一つだけ違うことがあります。」
 「・・・それは、なんだ?」
 「・・・あの指輪が、この鈴宮家に入ってきた経緯ですよ。まあ、それは今回は関係ないので。」
 「・・・そうか。」
 「絶対に、君たちの生活を元に戻して見せます。・・・明日は、頑張りましょうね。みなさん。」
 「・・・」
 何も答えることはなかった。だって、それぞれの心には・・・その気持ちは届いており、そして、向かうモノは同じコトだから。
 運命の勝負の時は・・・刻々と近づくのであった。

最終vol.7に続く。運命の”愛”の指輪のオークションは、果たして成功するのか。
そして、ナギたちの家は元に戻るのか。
第一に、ハヤテとナギたちの恋は・・・どうなってしまうのか?vol.7をお楽しみに!

その次のSSは、歩SS『シークレット・ラブ』。ようやく実行できそうです。2/14に公開です。
そして、ちょっと規制がかかるかもしれない、ヒナハムSS『ゆりばな』。
まだまだ、新作SSは公開するので・・・。とにかくは、次回のvol.7を楽しみにしてください。

それでは。これで。
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