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さて、ヒナギクSS『Change Heart』vol.2です。
ヒナギクは白皇学院に行き・・・ハヤテと出会う。そして、一つの決断をする。

コメディなので、悲しみは・・・そこまでありません。
予定通り、まあまあ長いボリュームでvol.2はお送りします。

感想やコメントなど、気軽に書いてください。

それでは、vol.2どうぞ!
~SELL 3 本当の自分では~

 白皇学院に着く。いつもは私は、朝の生徒会長の仕事があるんだけど・・・今はハヤテくんの姿だからそのようなことがないので楽だ。逆に言うと・・・ハヤテくんはやってくれているのだろうか。
 バレンタインデーの後に、私の家にハヤテくんが泊まったコトがあった。その時は、朝から私と白皇学院に来て、私の生徒会長としての仕事があることは覚えてくれているとは思うんだけど。まあ、8割方はやっていないだろう。しょうがない・・・これに関しては怒れない。って、怒らないようにしようと心がけなかったのかしら。
 「ハヤテ・・・今日もクソゲーみたいな授業を出なければいけないのか。」
 なんですって・・・授業ってものはね、
 「ナギお嬢様。授業はとても大切ですよ。お嬢様には、授業という物が一番大切だと思います。そんなコトを言ってはだめですよ。」
 「むっ・・・だめって、まるでヒナギクみたいだな。」
 今のハヤテくんは、私なんだからしょうがないじゃない。だって、『だめ』・・・いや、それ以外に言える方法はない。
 「第一に、そういう考えのヤツはおかしいんだ。どうして、授業に出る気があるのだ!」
 なんかむかつく・・・でも、ハヤテくんはきっと笑顔のはずだ。うん、笑顔で言わなきゃ。
 「大丈夫ですよ。僕だって一緒に受けるんですから・・・」
 と私は笑顔で言う。それが良かったんだろう。ナギはすぐに笑顔になった。
 「あ、ああ・・・ハヤテとなら別なのだぞ。高校の授業内容だって分かっているんだから。」
 私だって高校の授業内容は分かっている。といっても、ナギほどじゃないんだけどね。他人に上手に教えられる程度。知識の幅はナギには勝てない。
 「僕とは別・・・ですか。はははっ、おもしろいコトを言うんですね。」
 ちょっと、ナギをいじっちゃおうかな。
 「僕と一緒だったら、勉強もやってくれるんですか?」
 「ま、まあ・・・嫌だけどな!!」
 かわいい!ナギ・・・いじり甲斐があるわね。
 「じゃあ、僕に対しては白皇学院に行くのは『いやだ!』って言わないでくださいね。おねがいします。」
 「それは別だがな・・・ハヤテ。」
 さっきの甲高い声に比べて、今の声は冷静沈着といったところ。なんとなく、ハヤテくんの苦労が分かった気がする。ナギ・・・学校に行きなさい。毎日行きなさい。この場で言いたいところだけど、ハヤテくんの姿だから言えない・・・!
 「どうしたハヤテ・・・手が拳になってるぞ。」
 「な、なんでもありませんよ。は、ははは・・・さあ、教室まで直行ですよ!!」
 私はナギの手を引く。
 「お、おい・・・!!」
 ナギの言葉なんて気にしないで、私はナギの手を引きながら教室まで行った。まあ、ナギにとっては好きなハヤテくんの手だから、手を放せということはなかった。
 「うわあああっ・・・ゲームより早かった・・・」
 「す、すみません・・・」
 緊張する・・・教室に入るの。もし、私の姿のハヤテくんがいたら・・・それに、泉や美希、理沙にどう接すればいいのか・・・
 「ど、どうしたのだ。教室に入らないのか?」
 「は、はい。入りますよ。当たり前じゃないですか。あ、あはは。」
 とりあえず、ハヤテくんのように優しく接するコトよね。うん、そうよね・・・できるか分からないけど。
 「おおおっ、ナギちゃんにハヤ太くん。おはよう~」
 「おはようございます。せ、瀬川さん。」
 そういえば、泉と美希と理沙はハヤテくんのコトを『ハヤ太くん』って呼ぶんだったっけ。ちょっと迷っちゃったじゃない。
 「この前はありがとね。ハヤ太くん。」
 「えっ!?」
 この前のコトって何のコト?えええっ、ハヤテくん・・・泉になにかしたの?
 「携帯電話届けてもらって・・・それに、お父さんになにかされちゃったけど。」
 「そ、そうでしたね。別に、いいですって。」
 「ふふふっ・・・別に、ハヤ太くんだったら絶対に許してくれると思ったよ。にゃはは~作戦通りだったね。」
 何なのよ・・・ハヤテくんが泉の携帯電話を家に届けて、お父さんに何かされたですって!?そ、それって・・・
 『泉さん・・・今日は僕の部屋で楽しいコトをしませんか?』
 『ハ、ハヤ太くん・・・そんな、ナギちゃんがいるのに・・・』
 『僕が好きなのは・・・泉さんだけですよ。』
 『嬉しいコトを言ってくれるね・・・じゃ、今日だけだよ。』
 とか、その後・・・あんなコトして、こんなコトして・・・ハヤテくんの部屋に携帯を忘れて、その後に・・・
 『ぬあああっ、泉に何をした!!この童顔青年が!!』
 『ぼ、僕に・・・泉さんをください!!』
 『なんだとおおおっ!!泉に何をやったあああっ!!』
 『僕は・・・僕は・・・!!』
 うわあっ、なんてコトを考えているのかしら・・・
 「もう、ずいぶん前に携帯電話を落としちゃって・・・なんか、ナギちゃんの家のネコちゃんが持っていたところを、この美希ちゃんと理沙ちんが見つけたのだ。忘れちゃったのかな?ハヤ太くん。」
 「そ、そうでしたよね!!そうであってほしいですよね!!」
 「ハヤ太くんが自分で言ってたじゃない・・・」
 良かった・・・昨日の歩のコトといい、なんだか想像があっち方面に行っちゃうのは、きっと作者のせいよ。そうよ、これじゃ・・・私が変態っぽい感じになっちゃうじゃない!でも、ハヤテくんがそんなきっかけで泉の家に行ったワケじゃなくて。
 「なんだか、今日のハヤ太くんは変だな・・・」
 と、泉に最後に捨てぜりふを言われてしまった私は、ナギの後ろの席がハヤテくんの席であるコトを知っていたので、私は迷うことなく席に座った。
 「ハヤテくんは、まだ来てないわね・・・」
 怪しがられないように、私は小さくつぶやく。私の席のは、私の姿は見えない。ハヤテくん・・・何をやっているのだろうか。もしかして、私の姿になっちゃったから絶望してるとか?たしかに、ハヤテくん・・・ショックを受けるときは、とことんショックを受けちゃう方だから。それも否定できないけど・・・
 「どうした?ハヤテ・・・周りをキョロキョロ見ているようだが。」
 「い、いや・・・なんでもありません。」
 何でもないけど。早くハヤテくん来てよ・・・話したいことがたくさんあるのに。すると、廊下から何か走ってくる音がする・・・?
 「綾崎くん!」
 その正体は・・・雪路、私のお姉ちゃんだった。
 「ど、どうかしたの・・・じゃなくて、どうかしましたか・・・お姉ちゃん、じゃなくて桂先生。」
 「わ、わわわっ、ちょっとだけ綾崎くんもおかしいけど、そんなのは全然良いんだから!!」
 「その、『わわわっ』って何かあったんですか?」
 何を考えているのよ・・・と、そんな気持ちを込めながらお姉ちゃんに言う。
 「ヒナが・・・ヒナが急に優しくなってる!!」
 「は、はあああっ・・・?どういうコトですか?」
 優しくなっている・・・一瞬、私は嬉しい気分になったけど・・・それって、中身がハヤテくんなんでしょ!というコトは、普段の私が優しくないみたいじゃない!!しかも、今の言い方・・・優しいコトがめずらしいとか、そんな風に言ってくれるじゃない。女の子っぽくしてるのに。
 「で、そんなヒナギクさんが・・・何が優しいんですか!!」
 「う、うわわわっ!!今度は、綾崎くんがちょっとだけ恐くなってる!!」
 自分のコトを『ヒナギクさん』って呼ぶのは、この際は関係ない。お姉ちゃんの言葉に、今は怒りが隠しきれないんだから!
 「今日、朝・・・ちょっと、生徒会長に行ったのよ。そしたら、ヒナが・・・」
 「ちょっと待ってください。桂先生。ヒナギクさんに・・・何を言ったのですか?」
 「『お金貸して』って。」
 その瞬間、私の手は拳に変わった。なんですって・・・?『お金が欲しい』ですって?ふうん、また酒と博打につぎ込んだのね!
 「へえ、ヒナギクさんに・・・お金を貸して欲しいって言ったんですか。」
 「なんか、綾崎くんこわい・・・」
 さすがに、ハヤテくんの姿で怒りを表してはいけない・・・そう思い、私は徐々に笑顔を作っているが、あの怒りは収まっていない。
 「それで、ヒナギクさんにどんなコトを言われたんですか・・・?」
 「なんか、『だめですよ。でも、こ・ん・か・い・だ・け。』とか言われて・・・なんか、ヒナがおかしくなっちゃったよ!ねえ、綾崎くんはどう思う?」
 中身が私なんだから、それはよく言っておかなくちゃ。
 「へえ、ヒナギクさんっていつも優しいですよ。それは、桂先生が普段お金を借りてばっかりだから、ヒナギクさんを恐く感じてしまうんですよ。ヒナギクさんは、いつも優しい方だと思っていますよ。そういう風に言うのは、普段通りだと僕は思います。」
 「えええっ!?そうなの!?」
 「そうですよ!桂先生が、もう少しでもお金に対してきちんと言えば、ヒナギクさんだって今以上に優しくなりますよ。・・・きっと!!」
 このくらいは言わなきゃ・・・気が済まない。しかし、周りにいた美希と理沙が異議あり。
 「そうか?ハヤ太くん・・・この前、私たちがあげた映画のチケットで上手くいったんだな?だから、ヒナのコトをそんな風に言えるのだ。」
 美希・・・それって、どういうコトかしら?
 「ハヤ太くん。もう一度、ヒナのコトを見つめてみろ。かつては、私が生徒会長室にあったティーセットを割ってしまったとき、ヒナはものすごく起こった女だ。ハヤ太くん・・・もうちょっとだけな?」
 理沙・・・ひどいわね。あれは私のお気に入りだったの!それを割られちゃ・・・起こるのは当然でしょ。まったく、お姉ちゃんといい美希といい理沙といい・・・どうして、私が優しく接しようとしてるのに・・・
 でも、今まではきつくやっていた気がする。うん、ハヤテくんばかり考えていたけど、泉や美希や理沙・・・それに、お姉ちゃんにも厳しくしていた気がする。
 「・・・」
 何も言えなかった。どうにも。だけど・・・
 「あら、おはよう。」
 そう、こんな感じで聴いたのは初めてだ。私の声だった・・・
 「あ、ヒナが来たわよ!綾崎くん!」
 見ると、どうも優しげな目をしている・・・まあ、彼はいつも優しい目をしているから、私の体になってもそれは変わらないのだろう。
 「き、来たって・・・僕が何をすれば?」
 「ほら、行きなさい!!」
 すると、私は美希と理沙とお姉ちゃんに・・・ハヤテくんに向かって、勢いよく背中を押された。
 「きゃ、きゃあああっ!!」
 つい言ってしまった・・・でも、その声はハヤテくんも同じようで。そして、私はハヤテくんの上に倒れた。
 「だ、大丈夫ですか・・・ヒナギクさん。」
 「ぼ、いや・・・私の方こそ。ごめんなさい・・・」
 さすがハヤテくん・・・怒らなかったわ。って、今はどうして突き飛ばしたのよ!!私の方が怒ってしまう。
 「こらっ!!ハヤテ、さっさとヒナギクから離れろ!!」
 怒るのは、私が先ではなく・・・ナギだった。そのおかげで、私は怒らずに済んだ。ハヤテくんの姿で。
 「ねえ、ヒナは怒らないじゃない!!しかも、『ごめんなさい』なんて優しいボイスで言われるなんて!」
 「ちょっと、お姉ちゃん!!」
 えっ、ハヤテくん・・・怒った?
 「お姉ちゃんがそういう風に驚いているけど、それは・・・お姉ちゃんが、心を込めながら私のトコロに言ってきたから優しく態度をとったの。でも、今のは・・・ハヤテくんがかわいそうじゃない。ごめんね、ハヤテくん・・・」
 「ぼ、僕の方こそすみません・・・」
 とりあえずは、流れにあうような答えをしよう・・・そう思った。お姉ちゃんは、驚きというより何だか、安堵の表情を見せていた。
 「ヒナ・・・」
 「だから、今度からは・・・自分でやりくりできるようにしなさい。それだけ。」
 ちょっとふくれっ面になっている自分の顔を見て、なんだかかわいげのある顔だなと思った。私は、こんなに可愛い顔をしていたのだろうか。
 「ハヤテくん・・・」
 私は、小さい声で言った。
 「あなた・・・ハヤテくんよね?」
 そう言うと、私の姿のハヤテくんはコクリとうなずいた。
 「そう・・・」
 お姉ちゃんの言う、『いつもの私』が見られたのだろうか。安心した口ぶりで、
 「ご、ごめんなさいね。えっと・・・じゃあ、職員室に戻るから!!」
 お姉ちゃんは、ハヤテくんよりも速く走って職員室に戻っていった。
 「・・・ヒナギクさん。」
 「えっ、なに・・・?」
 「昼休みになったら・・・僕と一緒に二人になれるところに行きましょう。もちろん、このことについて・・・」
 「う、うん・・・そうだよね。このことだよね。」
 一瞬・・・告白かと思ったじゃない。またまた・・・当たり前よね。このことについてよね。でも・・・ハヤテくんに会えて良かった。
 「こらっ、何を話しているのだ・・・ハヤテ。さっさと席に戻らんか!!」
 「す、すみません・・・」
 それには、ナギをどうやって私をいないでも良いようにするか・・・悩みながらも午前の授業を受けるのであった。

~SELL 4 昼・二人きりになって~

 午前の授業はずっと教室だった。もし、体育とかがあったりしたら・・・私は男子の更衣室に行き、ハヤテくんは女子の更衣室に行ってしまい、互いにすごくしどろもどろしてしまっただろう。入れ替わってしまうタイミングに関しては、つくづくラッキーだと思ってしまう私だった。
 「それでは、授業を終わります。」
 午前の授業は全部終わり・・・ほとんどの生徒が、授業からの解放感にあふれて気分が良くなる時間。そして、学校での一日が8割方終わったという風に思う人も少なくないだろう。私も、そういう気分になったときはあったから。
 「それでは、お嬢様・・・」
 私が一人になれる状況。それは、一つしかなかった。
 「お嬢様。もう帰って良いですよ?」
 「えっ・・・どうしてなのだ?」
 ハヤテくん姿の私といられなくなるのが寂しいという悲しみもあるだろう。しかし、ナギはそれ以上に『帰っていい』という予想していない、希望の言葉がハヤテくんボイスで言われたんだ。それは、喜ぶわよね。
 「えっ、いいのか!!」
 「お嬢様も・・・大変らしいですから。お嬢様は頭が良いと言うことは、高校生になる以前に、それだけ授業よりも嫌なことをやらされたコトになるんだと思います。だから、お嬢様・・・今日の午後ぐらいは、ゆっくりしてください。」
 「ハヤテ・・・」
 ナギの目からは涙。しかし、慌てるコトは決してなかった。それは、嬉し涙だと分かったから。
 「お嬢様。SPの人に連絡をして・・・家に帰って良いですよ。」
 「あ、ああ!分かった!!ハヤテ、今日のおまえは最高だな!!」
 こっちはただ・・・私一人っていう状況を作りたいだけよ。ヒナギク姿なら、そんなコトは断じて許さないけど、これは特別なんだから。
 「じゃあ、ハヤテ・・・また屋敷でな。」
 「はい。」
 ナギは笑顔で帰っていった。これで・・・私一人の状況は作れた。
 教室にはもちろん、私の姿であるハヤテくんもいる。昼休みというコトだから、教室内も少し騒がしかったので、
 「ねえ、ハヤテくん。行きましょ。」
 「ええ。あ、僕・・・お弁当を作ってきたんで。」
 「あ、ありがとう・・・でも、私の声で『僕』はちょっと嫌ね。」
 「で、どこで食べるんですか・・・?こういう風な口調で話すには、周りに誰もいないようなトコロでないといけませんよ。」
 そうか・・・じゃあ、どこで食べればいいかしら。
 「ねえ、オススメの場所はないの?」
 「ご、ごめんなさい・・・思いつくところがありません。」
 今の言葉・・・やっぱり、私が今まで厳しく接しちゃったから、ハヤテくん・・・ごめんなさいなんて。
 しかし、私はすぐ早くに良い場所を思い浮かんだ。
 「ハヤテくん。私たちが出会った場所に・・・食べに行かない?」
 「えっ・・・」
 「それだったら・・・絶対にいないわよ。ね?」
 「はい・・・」
 私の声で、私に向かって敬語なのはちょっと違和感があったけど・・・それでも、ハヤテくんだって感じることができた。一気に・・・ほっとした。
 そして、私とハヤテくんは2人で出会った場所・・・時計塔の見える高い丘に行くのであった。

~SELL 5 今という“場合”は~

 ハヤテくんと出会った場所・・・それは、時計塔の見える少し高いところだった。私が雛を助けようとして・・・高いところが苦手なのに登ってしまったあの時だ。ハヤテくんがその時助けてくれた。あの場所に・・・私たちはいる。
 「ハヤテくん・・・久しぶりだね。ここ・・・」
 「そうですね・・・」
 と、最初は会ったときのコトを思いだしてしまう。時々、顔を赤くするときがあった。それは私も・・・ハヤテくんも。しかし、話をしなければ始まらない。私は、ハヤテくんに今回のコトについて訊いてみた。
 「ハヤテくん。ハヤテくんも・・・目が覚めたら、私の部屋にいたのよね?」
 「え、ええ・・・目が覚めたら、いつもより部屋が狭くて。それに・・・女の子っぽい部屋なので、どうしたんだろうかと思って。」
 「せ、狭くて悪かったわね・・・」
 「それに、声がヒナギクさんに似ていて・・・しかも、赤い髪が見えたんですよ。だから、これは夢だと思って髪を引っ張ったら・・・すごく痛くて。」
 「ちょ、ちょっと!なに引っ張っているのよ!私の髪なんだから・・・大切にしなさいよ。」
 「す、すみません・・・」
 し、しまった!!優しく接するって決めたのに・・・これじゃ、前までのヒナギクじゃない!
 「でも、それで分かったのね。」
 「はい・・・とりあえず、僕が作ったんです。一緒に食べましょう・・・」
 「あ、ありがとう。」
 ハヤテくんが作ってきてくれたお弁当・・・赤いちょっと大きめな弁当の中に、かわいらしく盛りつけられたおかず。そして、少し小さめなサンドイッチがある。マリアさんと同じぐらいに上品に作るんだ・・・ハヤテくん。
 「美味しそうね・・・」
 「きっと、ヒナギクさんは僕になっていて・・・執事の仕事があると思いまして。そんな余裕はないと思ったんです。だから・・・お嬢様の分もあるんですがね。」
 「ううん・・・ありがとう。私も朝起きたら・・・いつもより部屋が広くて。声もハヤテくんだし・・・ハヤテくんと同じだったわ。」
 私はきっと笑みを浮かべている・・・しかし、同時に悲しみもある。今まで、誰も信じてくれなかった。マリアさんも・・・笑顔で信じてくれなかった。悪くない・・・信じないのが普通なんだから。
 「ヒナギクさん・・・とにかく、食べましょう。さっきは・・・お嬢様を帰らしてくれてありがとうございます。ヒナギクさんだったら、あの方法で一人になると思っていましたよ。」
 「ありがとう・・・じゃあ、いただきます。」
 ハヤテくんからお箸をもらい・・・私は卵焼きを食べた。
 「おいしい・・・」
 「少し甘めにしておきました。この前のこともあったので・・・」
 「優しい味ね。」
 「・・・それより、その声で女性言葉でも気持ち悪くないのは僕だけですか?」
 「私もそう思ったわ。ふふふっ・・・同じコトを考えるのね。」
 周りには誰もいない・・・だから、笑顔で普段のように話せる。それが、何よりも嬉しかった。このままハヤテくんと2人きりでいたい・・・そう思ったりもした。
 「それよりも、ハヤテくん・・・どうすれば戻れると思う?」
 「きゅ、急にその話題に・・・?」
 「だって、私たちは何かしらの理由でこうして入れ替わっちゃったのよ。だったら、戻れる方法だってあるんじゃない?」
 「そうですね・・・前にテレビで見たことがあるんですけど、その人のコトを想い続けて寝てしまうと、翌日の朝にはその人の体に乗り移っていたという話がありました。まあ、ヒナギクさんは僕のコトなんてそんな風に思ってないと思いますが。」
 今、言えるかもしれないのに・・・でも、その人・・・ハヤテくんのコトを想い続けている、か・・・あっ!!
 『ハヤテくんと仲良くなりたい・・・』
 まさか、寝る前に歩とあんな風になっているんじゃないかって思って・・・もっと、ハヤテくんと仲良くなりたいって想い続けて寝ちゃったから、今の私がここにいるってコトなの?
 「ど、どうかしましたか?ヒナギクさん・・・顔が赤いですけど。」
 「な、なんでもないわよ!!」
 うそっ・・・もしかして、そのせいで入れ替わっちゃったの?それはないでしょ・・・まあ、その気持ちは嘘じゃないけど。
 「さっ、もっと食べてください。ヒナギクさん。」
 「わ、分かってるわよ!」
 優しくしようって心がけたのに・・・気づけばいつも通りの口調になってしまっている。でも、ハヤテくんは笑顔だった。この体・・・けっこうな量を食べても大丈夫なのね。美味しい物がたくさん食べられてちょっとうらやましいかも。
 「ヒナギクさん・・・」
 「な、なに?」
 「いえ・・・何でもありません。ふと、このまま・・・僕がこのヒナギクさんの姿で過ごすことになって、ヒナギクさんが僕の姿で過ごすことになったらどうしようかなって。」
 「そ、それは・・・」
 私もハヤテくんも・・・少し顔が赤くなった。この後の言葉が見つからない・・・でも、私がそれをとぎらせた。
 「そんなコトは言わないで。戻れるって・・・信じましょう。それまでは、今の姿であることを受け入れなきゃ。」
 「ヒナギクさん・・・」
 「大丈夫よ。入れ替わったなら、確実に戻るコトだってあるはずだわ。ねえ、ハヤテくん。それだけを信じましょう。」
 「・・・はい。」
 「さあ、ハヤテくんの作ってくれたお弁当を食べましょう。けっこう美味しいわよ。」
 「ありがとうございます。」
 なんか、これがアニメじゃなくて良かった・・・とか、そんな風に思いながら私とハヤテくんはその時を楽しんだ。これで・・・ハヤテくんと私がなんだかすごく近づいた気がした。
 だけど・・・今の姿がヒナギクである。それを言いたい人物が一人いた。歩だ。歩には絶対に・・・信じてほしいから。勘違いは・・・歩にとって一番かわいそうだと思ったから。
 「ヒナギクさん・・・?」
 「いえ、なんでもないわ。それよりも・・・朝、生徒会長室にいたというコトは・・・もしかして、仕事を変わりにやってくれたの?」
 「ええ、なんとかできました。今日の放課後はないそうです。」
 「そう・・・ありがとう。」
 ハヤテくん・・・あの時のコト、覚えていてくれていたのね。ふふふっ、執事だけあって仕事はてきぱきできるようね。
 「そうだ、今日の放課後はないから・・・バイトがあるのを忘れていたわ。ほら、喫茶どんぐりで。」
 「そうですか。喫茶どんぐりで・・・」
 「たしか、歩も今日はバイトらしいから・・・ハヤテくん、歩には話さないで。もしかしたら、一番話したい相手かもしれないけど。お願い・・・」
 「ヒナギクさん・・・」
 その後に言おうとした・・・「私が言うから。」でも・・・言わなかった。それは、きっと・・・歩と上手く話すことができなくなるだろうから。
 「う、ううん・・・なんでもないわよ。じゃあ、ハヤテくん。お願いね。」
 「はい。分かりました。」
 そして、私たちは笑顔で教室に戻り・・・午後の授業を受けるのであった。

~SELL 6 決意~

 午後の授業も平和に終わって・・・終礼も終わった。まあ、ハヤテくん姿だからこのまま帰れる。大抵の時は、この後に生徒会の仕事や剣道部の練習があるんだけど、今日はその2つとも無かった。なので、私の姿であるハヤテくんもすぐに帰れると思う。
 「じゃあ、ハヤテくん・・・バイトの方、お願いね。」
 「はい、分かっていますよ。」
 「うん・・・歩にも普通に接していてね。」
 「はい。」
 その微妙な言葉に・・・ハヤテくんはどう思ったんだろうか。少し、違和感ありげな表情を見せたが。
 「ところで、ハヤテくんはバイトはないの?」
 「ええ・・・今日はありません。たぶん・・・お嬢様のそばにお仕えすると思いますよ。きっと、ゲームで。」
 「そ、そうなの・・・」
 「それでは・・・また明日。」
 「・・・うん。」
 そう言い、私はハヤテくんと別れた。
 一人で帰ることもあれば・・・泉や美希や理沙と4人で帰るときもあった。また、千桜とも帰るときもある。
 時々は・・・笑い合って、おしゃれな店に行ってみたり・・・それが、ハヤテくんだと近くはできない。もしかしたら、永遠にできなくなるかもしれない。それが、とても嫌で・・・ハヤテくんは、ナギと一緒に来たときは常にナギと帰っているんだろうな。
 「ねえ・・・早く、私の姿に戻りたいわよ・・・」
 空を見上げて、私はただそう言った。空は雲一つない・・・何も不安なんてなさそうに、私を暖かい光で包んでいる。
 「とりあえず、ナギのトコロに戻らなきゃ・・・」
 そう言うと、私は三千院家に戻るのであった。
 三千院家は広い・・・その面積は白皇学院に負けていないほどだ。自然の多さなども白皇学院に匹敵するほどだ。なんか、遊園地があるみたいだけど・・・本当なのかしら。あったら行ってみたいわ。観覧車や絶叫系以外で。
 「ただいま戻りました・・・」
 と、屋敷の中に入ると・・・運良くマリアさんがいた。
 「あら、ハヤテくん・・・」
 なんだか、マリアさんは少し怒っていた。やはり、ナギを自分の意志で返させてしまったからだろうか。
 「マ、マリアさん・・・すみませんでした!僕の勝手な判断に・・・」
 「ハヤテくん。」
 マリアさんはゆっくりと私の前に立つ。何かされるのか・・・ただ、それだけを待った。しかし・・・
 「いいですよ。」
 「え?」
 「あの子・・・普段は学校にもいかないんですよ。それを、ハヤテくんが来てくれてからは、行く回数が多くなって・・・最近はかなり多くなっています。途中で戻ってきても、全然怒りませんわよ。」
 「マリアさん・・・」
 なんて理解のある人だ・・・頭も良いし、美人な人だし。本当にマリアさんは、私の鏡ね。も、もしかして・・・この前、あんなコトがあったけど・・・ハヤテくん、マリアさんのこと・・・まさかね。
 「どうかしましたか?ハヤテくん・・・」
 「いえ・・・なんでもありません。お嬢様はどこですか?」
 「ああ、ナギなら・・・ゲームをやっていますわ。最初は熱中していたんですが、後から『ハヤテがいないとつまらない』とか言いだしてきたので、早くナギのトコロに行ってあげてください。」
 「はい・・・」
 さすがハヤテくん。予想通り・・・ナギはゲームをしていたわよ。私は、ナギのいるトコロはぱっと浮かばなかったが、バッグをハヤテくんの部屋に置くと、ゲームのしている音が聞こえる。そこにナギがいると思い、私はそこに行くのであった。
 「お嬢様。」
 「おっ、ハヤテか。おかえり・・・さっ、ハヤテもやろう。もう、つまらなかったぞ。」
 笑顔で迎え入れてくれた・・・でも、出にくい。
 ナギのやっていたのは格闘ゲーム。まあ、前にはやったことがあるけど・・・ナギなんかに勝てるはずがない。
 「ハヤテは強いからな・・・五分五分ぐらいだよな。たしか。」
 「そ、そうでしたね・・・」
 ご、五分五分って・・・ゲーマーなナギにそこまで相手にできるなんて、すごい技術力ね。ハヤテくん。
 「それじゃ、スタートするぞ。」
 ゲームが始まる。もちろん、やり方も知らない。私は画面を見ながらもナギの指使いを見て、何とか対応する。
 「むっ、この前よりすこぶる弱いぞ。どうしたのだ?」
 弱いのは分かっているのは分かっているけど、やけにむかつくのは・・・やっぱり、ちょっとナギの言い方が悪いのよね。
 「どうした、あっさりと勝ってしまったぞ。」
 でも、とりあえず・・・ナギに対抗するしかない。
 その後は、少しずつであるがナギと戦えるようになり・・・勝つことも出た。いつしかは、ハヤテくんのように五分五分ぐらいになった。
 「ハヤテ・・・少し手がなまっていたな。元のハヤテに戻るまで、こんなにかかるとはな。」
 ここまで戦える私に、自分で褒めたいほどよ。だけど・・・きりが良いから、ここで・・・ナギに言った。
 「お嬢様・・・すみません。僕、バイト先のあの店に・・・忘れ物をしてしまった物を思いだして。」
 「えっ・・・」
 「本当にすみません。夜までには戻ってきますから!」
 「ハヤテ・・・分かった。そしたら、またゲームやるからな。それまでに・・・もっと強くなってやる。」
 「ふっ、そうですね。」
 微妙に闘志がわいたところで・・・私は、三千院家の屋敷を出た。
 「このことは・・・絶対に歩に伝えなきゃ。」
 どんな場合でも・・・たとえ、ハヤテくんがいても。私は・・・桂ヒナギクだと信じてほしい。だから・・・今、走る。
 「待っていて・・・歩。」
 信じてくれないかもしれない・・・でも、そんな不安はなかった。あの時、私はハヤテくんのコトが好きだって言ったとき、歩は・・・笑顔で答えてくれたから。
 だったら、今回のことだって・・・きっと信じてくれる。私は、そう歩を信じている・・・だから、私は走っている。
 夕方になって、銀杏商店街も活気づいている。私と歩、ハヤテくんとナギがバイトをしている店『喫茶 どんぐり』は、この商店街の中にある。マスターは趣味程度にやっているらしい。客もあまり来ない。
 「見えた・・・」
 走りながら喫茶どんぐりを見つけた。もちろん、店に入る人もいない。なので、私はゆっくりと喫茶どんぐりの中に入った。
 「いらっしゃいませ!って・・・」
 かわいらしい高校生の声・・・それは、やはり歩だった。
 「あれ、ハヤテくん・・・どうかしたの?」
 「マスターは?いますか?」
 「いえ・・・今日は夜までは戻らないそうだけど、マスターに何かあるのかな?」
 「な、何にもありません。」
 「じゃあ、誰に話があるのかな・・・?」
 少しの間・・・私は言い出せなかった。でも、避けられない・・・ここまで来たら。言わずに帰れない。
 「目的は・・・西沢さん。いや、歩・・・あなたにあるの!」
 歩は、かわいく目を見開いて・・・私のコトを見つめる。
 「ハ、ハヤテくん・・・歩って・・・」
 「歩・・・話を聞いて。」
 歩は、ハヤテくんボイスで「歩」と言われたから、当然顔は赤くなって・・・恥ずかしい気持ちにもなってきているだろう。でも、私の言葉で伝えたい。だから、歩って言う。どんな声でも・・・絶対に。
 そして、私は・・・顔を赤くする歩を見つめながら、私はゆっくりと口を開けるのであった。

vol.3に続く。次回は最終章!歩に気持ちを伝えて・・・一夜を過ごす。
そして、目が覚めると・・・
果たして、ハヤテとヒナギクはどうなるか?そして、想いは形となるのか?
最終vol.3お楽しみに!!

シャナの小説・・・Ⅲまで買って今読んでます。すごくおもしろいです。
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