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Lonely not Lovely

『Lonely not Lovely』


 最近、絵里の様子がちょっとおかしいのです。
 以前よりも、希と一緒にいるところを見るのが少なくなりました。その代わり、他のメンバーと一緒にいるのなら安心するのです。しかし、絵里は独りでいることが多くなったような気がします。
 そして、以前よりも絵里からの視線を感じるようになった気がします。特に私が穂乃果やことりと一緒にいるときに。そんな状況を面白くないと思っているかのように、絵里はちょっと不機嫌な様子です。
 もしかして、絵里が独りの時間が多いのは、私の所為なのでしょうか。もし、そうなのであれば私は絵里に謝りたいです。
 今日も、激しい練習には必要なエネルギーの補給だと言ってパンをたくさん食べていた穂乃果を叱っていた私を、絵里は遠くの方から見ていました。そんな彼女の表情はやはり、浮かないもので。
 練習が終わり、偶然にも二人きりになったので声をかけてみることにしましょう。
「絵里、少し……よろしいでしょうか」
「いいけれど、どうかした、海未?」
 そう言う絵里はとっても嬉しそうでした。様子がおかしい原因が私であることを確信させる変わりぶりです。私、絵里に何をしてしまったのでしょう……。
「絵里の様子が最近、おかしいと思いまして。何かあったのかと。もし、悩み事があれば、抱え込まずに遠慮無く言ってください。絵里の……不機嫌な顔や寂しそうな顔はできるだけ見たくないのです」
「海未……」
 絵里の頬がほんのりと赤くなりました。そして、絵里の視線がちらつき始めます。ど、どうしてしまったのでしょう。
「……じゃあ、海未に我が儘を聞いてもらっていいかしら」
「私にできることであれば」
「今日、私の家に泊まりに来て欲しいの。海未と二人きりの時間を……過ごしたい」
「そうですか。分かりました」
 しっかりものの絵里が我が儘を言うのはとても可愛らしいです。しかも、私と二人きりになりたいなんて。ちょっとだけドキドキしてしまいました。
 制服に着替え、私は絵里と一緒に彼女の家へと直接向かいます。
「ただいま……って言っても、今日は亜里沙がいないのよね」
「雪穂のところにお泊まりですか?」
「……ええ、そうよ」
「だから、私と二人きりになりたいと家に連れてきてくれたのですね」
 きっと、絵里は亜里沙がいなくなって一人きりになってしまうのが寂しくて、私を家に呼んでくださったのですね。
「ふふっ」
「何を笑ってるのよ」
「一人で寂しいならそう言ってくれていいのですよ。まったく、絵里も可愛いところがあるのですね」
「その言い方、まるで私に可愛いところが全くなかったみたいじゃない」
 絵里は不満そうな表情を見せ、頬を少し膨らませます。
「そんな風に思っていませんよ。だって、かしこいかわいいエリーチカ、なのでしょう?」
「……うん」
 何故だか分かりませんが、今日の絵里はいつも以上に可愛らしく感じます。普段はしっかりとしたお姉さんという雰囲気ですが、今日はどこか甘えたがりな妹のよう。
「そういえば、絵里の家に上がるのは初めて――」
 その時でした。
 ――ドンッ!
 私は……絵里に壁へと追い詰められたのです。私の耳元で壁を叩く音が聞こえて、気付けば絵里の顔がとても近かった。
 これは巷で噂されている壁ドン、という行為ですよね。前に穂乃果がことりに壁ドンをしていたのを見たことがあります。その時、ことりは嬉しそうに「きゃー」と言っていましたが、私にはとても同じような反応はできません。相手が絵里だから、でしょうか。
「絵里……」
 絵里はとても真剣そうな表情で私のことを見つめていて、彼女の温かな吐息が私の口元に当たってきます。それが物凄くドキドキさせます。
「……海未の、ばか」
「えっ?」
「……私は寂しい想いをしているけれど、それは亜里沙が雪穂のところに行ったからじゃないの。海未、あなたが穂乃果やことりとばかり一緒にいるからなの!」
「えっ……」
 絵里の切実な訴えにようやく、全てが分かった気がしました。
 私は本当に馬鹿です。そして、こんな私を鈍感と言うのでしょう。

「私はあなたのことが好き。海未」

 そして、絵里はまるで私のことを離さないと言わんばかりの口づけをしてきたのです。ほんの一瞬だけでしたが、彼女の柔らかさを確かに感じました。
「私と、恋人として付き合ってくれる?」
「……口づけまでされたのに、断れるわけがないじゃないですか。私、初めての口づけは好きな人に捧げると決めていたんですよ」
「ご、ごめんなさい……それなのに、無理矢理しちゃって……」
「いいのですよ。私も絵里のことが好きなのですから」
 思えば、私はずっと絵里のことが好きだったのかもしれません。絵里の様子がおかしくなったことに気付いてから、ずっと絵里のことが頭から離れなくなって。絵里が何か苦しんでいるかもしれないと思ったら、私自身も苦しくなってしまって。そして、絵里の嬉しそうだと私もとても嬉しいのです。
 それがやっと恋だと分かったなんて。絵里の言うとおり、私は馬鹿、ですね。
「私で良ければ、ふつつか者ですが宜しくお願いします」
 その返事に迷いはありませんでした。相手が女の子というのは関係ありません。好きな人と一緒にいることが大切だと思うので。
 そして、絵里のことを抱きしめてお返しの口づけをしました。絵里からの口づけもいいですけれど、自分からする口づけも……気持ちいいです。そして、絵里の甘い匂いが私の気持ちを高ぶらせていきます。
「……ありがとう、海未。私、海未のことを幸せにするから」
「ふふっ、王子様みたいですね」
 私に壁ドンをして、告白をして、唇を奪う。こんなに大胆にも素敵なことしてくる絵里だったら、どんな人の心でも奪ってしまいそうです。
「王子様は海未よ。私をμ’sに入ろうか悩んでいたとき、後ろから寄り添ってくれたじゃない」
 絵里がμ’sに入ったあのときのこと、ですか。
「もしかして、その時から私のことを……?」
「誰よりも気になっていたのは事実ね。それが恋だと自覚したのはもうちょっと後だけれど」
「そ、そうだったのですか……」
 それでも、絵里は何ヶ月も前から私のことを好きであったことは事実。そして、その想いが最近になって表情や行動に現れ始めていたのですね。
「……今までの我慢を今夜、あなたにぶつけてもいいかしら。もちろん、海未の嫌なことはしないから」
「……いいですよ。だって、私は絵里の彼女……なのですから」
「ありがとう」
 今夜、絵里とどのように過ごすのか。考えていると物凄くドキドキします。
 ただ、一つだけ言えることは素敵な時間になることは間違いないということです。それはこの一夜だけなく、これからずっと続いていく。


『Lonely not Lovely』 終わり


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