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第7話『サイキック・ストラテジー』。公開です。
伊澄&咲夜ストーリー。

キャラ小説 伊澄&咲夜Storyにもしました。

2月3日の怨念・・・それは、豆まきによって膨らんだ鬼の恨み。
伊澄と咲夜がそれに挑む・・・そんな話です。
短編で、一話完結です。とても読みやすくなっています。


それでは、続きからどうぞ。

(2013.5.22 ハヤテのごとく!SSへカテゴリ変更)
SS『サイキック・ストラテジー』


~PROLOGUE 2月3日の怨念~

 2月3日・・・それは、鬼にとって最悪の日であった!
 『鬼は外 福は内』
 こんな言葉を誰が決めたんだ。決めたヤツに今でも復讐したいのは山々だ。ただ、俺たちはひっそりと暮らしたいのに。
 『こらこら、豆を玄関から投げなさい。』
 豆が痛いんだゴルァ!!1年間に1回の最悪の日が2月3日なんだよ!俺は、この日だけは大嫌いなんだ!!
 だが、決めたヤツがとっくに死んでいるはず。ならば、2月3日のこの日・・・全ての人間に復讐するのみ!!うおおおっ!!
 第一に、豆が多すぎるんだ!!俺は、豆が大嫌いなんだよ。はあっ・・・豆をくれるのはいいけど投げないでほしい。うん。
 「ならば・・・実際に復讐するのみ!!」
 ま、全世界はかわいそうだから日本人だけにしておこう。豆まき習慣なんて、むしろ日本人しかいないんだから。
 「よし、では・・・実世界に復讐するか。」
 ここに、小さな復讐劇が始まるのである。

~SELL 1 えほ~まき~

 2月3日。鷺ノ宮邸。
 昨日は、ハヤテが修行していたアレキサンマルコ教会に潜んでいる妖怪を見事に退治し、今日は2月3日。節分。伊澄はいつも通りにゆっくりしていた。
 「・・・」
 本を読んでみる。節分って・・・何をするのかなって。
 「・・・えほ~まき。」
 恵方巻。それは北西の方を向き、目を閉じながら願いを込めて食べると、その年は幸福が訪れるという。
 「これ、食べた方がいい・・・」
 家を出るといつも迷ってしまう伊澄。やはり、伊澄にとっての願い事はあれしかないだろう。そう思い、伊澄は部屋からゆっくりと出た。
 「私の願いは、迷子にならないコト・・・」
 廊下を歩いているとき、伊澄はこればかりをつぶやいていた。
 「迷子にならない、迷子にならない。」
 と、今・・・どこに向かっていて、どこを歩いているのだろう。
 「どこに向かっているのでしょうか。そういえば・・・」
 オロオロ・・・私はどこに向かっているのでしょうか。
 「えほ~まきでした。」
 そうよ。えほ~まきを食べようとお母さまに頼むところでした。
 「オロオロ・・・あ、初穂お母さま。」
 「あら・・・伊澄ちゃん。どうかしたの?何かを食べたいような顔をしているけど。」
 「あの、お母さま。本をお読みになって知ったのです。節分に、えほ~まきを食べると良いコトが起こるらしいです。」
 「えほ~まき。ああ、恵方巻ね。ちょうど買ってきてあるのよ。だから、伊澄ちゃん。もうすぐお昼だから、一緒に食べましょう・・・」
 「はい・・・お母さま。」
 のんびりと話すこの親子・・・伊澄の母親の名前は初穂だ。
 「でも、伊澄ちゃんが恵方巻を食べたいなんて言うなんて。お母さんは嬉しいわ。」
 「いえいえ・・・私にも願いゴトがありますから。」
 その願い事は何なのかは聞かなかったが・・・初穂と伊澄は居間に着いた。
 「あれが・・・恵方巻。」
 初穂が指した恵方巻・・・いかにも普通だった!
 「まあ、これが恵方巻なのですね。まあ、美味しそう・・・」
 ちゃんとしている箱に、伊澄は手をかける。
 「ワクワク、ドキドキ・・・」
 箱をパッと開ける。すると、そこには恵方巻が6つ入っていた。
 「これが、恵方巻・・・美味しそうですわ。私、初めて食べますわ。」
 「伊澄ちゃん。恵方巻って何かいわれがあるのでは?」
 「え~と・・・え~と。なんでしたっけ・・・えほ~まきのいわれは。」
 伊澄がじっくりと考えた。恵方巻ってどこかの方向を向いて食べるはずだった・・・さあ、どこでしょう?
 「たしか、太陽とはほぼ真逆の方に向いて食べるコトは覚えているのですが・・・」
 「真逆・・・しかも、ほぼなのね。」
 「ええ・・・ほぼなのです。」
 ほぼというところに悩みドコロがあったのか。伊澄と初穂はどの方向を向いて食べるのか・・・数分ぐらい悩んでいた。
 「あ、北西と本には書いてありました。お母さま。」
 「北西なの・・・まあ、なんとも良い方向で。」
 「・・・どこが良いのですか?」
 「さあ?まあ、伊澄ちゃん。恵方巻を食べましょう。北西の方を向いて。」
 「はい・・・お母さま。」
 小皿に醤油を用意し、箸で恵方巻をつかんだ。だが、ここで箸が止まった。
 「・・・お母さま。北西とはどちらにあるのでしょうか。」
 「さあ、どこにあるのかしら。」
 そう、家の外に出ると必ずと言っていいほど迷子になってしまう伊澄にとっては・・・どこがどっちの方角など、分かるはずがなかったのだ。
 「お母さま。こういうときはどのようにすれば・・・?」
 「・・・とにかく、回りながら食べればいいのです。それでは、行きますよ・・・はい。」
 と、回ろうと思った瞬間だった!
 「それじゃ意味ないわ!」
 咲夜参上。第1話以来の登場だ。
 「さ、さくや・・・いたい。」
 「何で回るんや!そりゃ、回れば全ての方向が見える・・・とか、そんなコトを考えているのは見え見えやけど。恵方巻の意味がなくなるやろ!」
 「ですが、どうやって方角を知ればいいのですか?」
 「簡単やないか。これを使えばええねん。」
 咲夜は伊澄に方位磁石を渡した。だが、伊澄はこれが何かを知らない。
 「これには、不可能解読のNSがある・・・」
 「い、伊澄さん。これ・・・何か知らんの?」
 「何なのですか・・・赤い針がNに向いている・・・」
 「・・・これは、相当な方向ボケと見た。伊澄さん。これは方位磁石と言ってな、これを使えばどこがどの方向なのか分かるんや。」
 「なるほど・・・咲夜、いつの間にそんなもの・・・」
 「なん・・・伊澄さんが小さい頃から普通にあったで。」
 「で、どちらが北西なの?」
 咲夜は方位磁石を見る・・・すると、指を指した。
 「あっちや!!」
 「へえ・・・池の方なのね。分かりましたわ。」
 「じゃあ、報酬で恵方巻を一ついただくわ。ええな?」
 「ええ。」
 咲夜も片手に醤油を注いだ小皿、そして箸で恵方巻をつかんで、
 「じゃあ、北西方向に向かってな。じゃあ、食べるで。」
 伊澄、咲夜、初穂は北西方向を向いて恵方巻を食べた。
 (どうか、迷子になりませんように。そして、ナギとあの方が良い関係になれますように。咲夜は普通でありますように。)
 「なんで普通なんや!もう少しツッコミにキレをください・・・みたいなコトを神に頼めばええねん!!」
 「咲夜は今でも十分ですから。もう少し抑えてほしいと・・・」
 「これでええんや!私なんてな、あの借金執事を良いボケ役にできますように・・・って拝んでたんや!」
 「それはそれは・・・ずいぶん高度な欲求ですわね。」
 伊澄は少しずつ食べ・・・咲夜は既に食べ終えていた。
 「あら、もう食べ終わったの?」
 「伊澄さんがおそいんや。もう一個食べてしまうで。」
 「いいですよ。私は一個で十分ですから。美味しいですわ、恵方巻。」
 「ほな、もう一個いただくで。」
 しかし、この時・・・伊澄は何かを感じ取っていた。この時期特有かつ日本のみに存在する妖怪を。
 「咲夜・・・おいしい?」
 「めっちゃうまいで。なんや、じゃあ・・・恵方巻を食べ終わったら豆まきでもするか。今日は節分やから。鬼をぶっ倒すで!」
 「そう・・・今日は節分だったのね。すっかり忘れていたわ。」
 だから、アレを感じたのね・・・
 「アホ。だから、恵方巻をいう寿司を食べてるんやないか。」
 「あら、ハリセンでつっこまないのね。」
 「ええつっこみや。なんせ、初穂さんがおるからな。何度もばしばし叩けん。」
 「うふふ・・・普段よりぼけていませんよ。」
 伊澄はようやく一個を食べ終わった。咲夜は恵方巻を二個食べてしまった。
 「やっぱ寿司ってええな。日本の文化の極みやな。」
 「そうね。自然のものを食べているのですから・・・感謝しなきゃね。咲夜。」
 「なんか、伊澄さん・・・スケールがバカでかくなってるで。」
 「うふふ・・・さあ、咲夜・・・豆まきでもしましょう。ちょうどいいところに・・・こんなにお豆がありましたわ。」
 机の上には、恵方巻の横にたくさんの豆があった。もちろん、入れる容器までもがしっかりと揃っている。
 「なんや、けっこう用意がええんやな。ほな、玄関で豆まきするで!!」
 「ええ・・・分かりましたわ。」
 「何かめずらしいな。伊澄さんがこんなコトをしようとするなんて・・・」
 「うふふ。なんか・・・」
 それは、伊澄に確かめたいことがあったから。咲夜を利用するコトが・・・ちょうどいい材料になるから。自分でも・・・
 伊澄と咲夜は、豆を持って玄関に出るのであった。

~SELL 2 豆にこめる恨み~

 伊澄と咲夜は玄関に。
 「やっぱええな、和風の家は。玄関がすごくええわ。ほな・・・玄関に豆をまくで!!鬼は外! 福は内!」
 「・・・」
 まだ異変がない・・・
 「ほな、伊澄さん・・・アンタも豆をまいた方がええで。まかんと、鬼が伊澄さんを襲うで・・・」
 「分かりました。鬼はぁ~外。福わぁ~内。」
 「なんや、その萌え声での豆まきは。鬼が伊澄さんによろめいてしまうで。」
 「咲夜のように大声は出せないんですよ。」
 「今、私の中でピキッ!って言ったで。なんや・・・じゃあ、うちが伊澄さんの分まで豆まきしたるで。」
 咲夜が勢いよく投げる。
 「鬼は外! 福は・・・うわあああっ!!」
 「ど、どうかしたの?咲夜・・・」
 「て、手が・・・動かへん!ど、どうして・・・背一杯力を入れてんのに・・・」
 「やっぱり・・・私がなんとかしましょう。えい。」
 伊澄は札を取り出して、咲夜の手を解放させた。
 「う、うわっ!!」
 力をかなり入れてしまったせいか、咲夜は急に前屈みになり倒れた。
 「大丈夫?咲夜・・・」
 「あ、ああ・・・動かしてくれてありがとうな。せやけど、今の・・・なんや?急に手が動かなくなったで。」
 「鬼の霊が・・・咲夜を襲ったの。」
 「おにのれい・・・?なんか、どっちかにしてくれたらありがたいんやけど・・・」
 「2月3日はなんの日でしたっけ?」
 「ボケはやめにしてくれへん?節分や。」
 「そう、節分・・・それは、鬼を退治する日でもありますよね。大まかに言えば。」
 伊澄はそう言うと、お札を掲げた。
 「ど、どうしたんや!伊澄さん・・・」
 「こうしておけば、咲夜への鬼の怨念が・・・」
 「せやけど、どうして今ごろ・・・」
 「節分に豆をまく。それは、昔からあったこと・・・豆は、鬼にとって天敵だったのです。物理的な意味で。」
 「物理的・・・あっ、豆まきか!」
 「そう・・・昔からの積年の恨みを積もらして・・・そして、今・・・爆発したのです。鬼の恨みが日本中に。」
 そのちょっとだけ難しい説明は、さすがの咲夜でもつっこむコトはできなかった。
 「でも、どうして日本だけなんや?積年の恨みが爆発するなら、世界中を包んでもおかしくないんちゃう?」
 「いえ・・・この豆まきという行事はこの日本のみ行っています。それに、鬼という生物は日本で誕生したのです。なので、鬼の復讐の対象は・・・豆まきを行う全ての日本人なのです。」
 「というコトは、うちが豆をまこうとしたときに手がしびれたのは、その積年の恨みやったちゅうわけか?」
 「たぶんそうだと思います。このお札で消えてしまったコトを考えると・・・」
 「なんやて・・・」
 そして、また咲夜が豆を投げようとした。
 「鬼は・・・うっ!なんか、さっきはしびれたけど・・・今度は腕が痛いで!あああっ、伊澄さん!早くなんとかしてえな!」
 「はいはい・・・」
 伊澄は札を咲夜の腕に当て、鬼の恨みを消去した。
 「でも、そんなコトがあるとはな・・・風習としてやってきたコトの裏には、こんな恨みも常に積もっていたとはな。」
 「ええ、でも・・・今さっき恨みは解かれました。だから・・・今からその恨みの元を退治すればすぐに消えると思います。」
 「なんか、バトルっぽい雰囲気になったな・・・」
 「ばとる・・・まあ、これは除霊ですよ。咲夜・・・手伝ってくれますか?」
 「ええで。この恨み・・・鬼に返してくれるわ!!」
 だから、鬼の恨みは消えないのよ・・・伊澄は心の中で笑った。
 「心の中で笑うな!そして、世の人間を笑わせるんや!!」
 「咲夜・・・まずは、鬼さんのトコロに行くのみです。『鬼さんこちら 手の鳴る方へ』なんて言ったら、全ての怨念が集結してしまい私たちの手に負えなくなってしまいます。なので、挑発はやめてください。」
 「ほう、伊澄さん・・・安全杯でいくんやな?」
 「はい・・・」
 伊澄はクスクスと笑いながら・・・ゆっくりと歩き出した。
 「お、おい!どこに行くんや!」
 「今から、鬼さんの怨念の元に行くのですよ。」
 「えっ・・・どこにあるか分かるんか!?」
 クスリ・・・伊澄の口はゆっくりと開き、咲夜に笑い声で言った。
 「咲夜、いつもどうして私が迷子になるか・・・分かってる?」
 「・・・もしかして、霊を読みとって・・・?」
 「そうです。といっても、全体の一割にも達しませんが。しかし、私は霊や怨念などを感じるコトができる。だから・・・どこにあるかは分かるの。」
 「伊澄さん・・・」
 「さあ、行きますよ・・・咲夜。日本の風習を守るために。」
 「なんか、無類のヒーローになった気分や!!」
 「コンビ的に・・・ですけど。」
 そう、もしかしたらこの瞬間に、咲夜のように手が動かなくなってしまった人もいるかもしれない。もしかしたら、鬼の怨念が具現化したかもしれない。
 鬼の怨念を暴くため・・・倒すため。伊澄と咲夜は歩き始めた。

~SELL 3 怨念空間~

 伊澄を頼りにしていいのだろうか・・・咲夜は不安と共に伊澄の後ろを歩き続ける。
 「なあ、伊澄さん・・・本当に怨念の集まる場所はあるんか?」
 「ありませんよ。」
 「な、なんやて!!」
 咲夜はハリセンで伊澄につっこもうと思ったが、伊澄はすごく真剣になってそう言っているのでつっこめなかった。
 「・・・それって、どういうコトや?どこかには、怨念の集まる場所か・・・怨念の元の場所はあるやろ?それをどうして、伊澄さんは真剣に言えるんや?」
 「・・・なぜって?この空間に存在しないから。」
 「この空間に存在しない?それって・・・」
 そのとおりよ。つまり・・・
 「別空間が存在するってコト。そう、この現実空間とは異なる怨念空間が存在するの。だから、今・・・その怨念空間の入口を探しているのよ。」
 「おんねん・・・怨念が集まるから怨念空間ってコトやな。」
 「怨念空間はとても暗く・・・怨念に満ちています。私のそばから離れないでくださいね。咲夜。死んでも死にきれなくなるので。」
 「そ、そうか・・・つっこめる余裕もないわ。」
 あの負け犬公園を歩く・・・公園のベンチ前に来るとぱたりと伊澄の足は止まった。
 「伊澄さん。どうしたんや?」
 「ここよ。怨念空間の入り口は。」
 「え、えええっ!!ここ・・・ただの公園のベンチやないか!!」
 「でも・・・ここから怨念は出発しているの。だから・・・咲夜、ちょっと離れていて。切り開くから。」
 「切り開くって・・・どうやって!!」
 「ふふふっ・・・仕事スイッチ。ぽちっとな。」
 すると、伊澄は上品な巾着袋から札を取り出し・・・
 「・・・」
 となっているが、実際には呪文を早口で言っているのでよろしく。
 伊澄が呪文を唱えるうちに・・・黒い点が現れ、それが等身大の大きさまでに膨らんでいった。
 「こ、これは・・・」
 「これが、怨念空間への入り口よ。さあ、入りましょう・・・」
 「は、入りましょうって!」
 「いいから。私の手につかまって。」
 伊澄はにこりと笑うと、咲夜の手をつかみ強引に怨念空間の中に入っていった。
 「いたたっ・・・ここはどこや!!」
 周りは暗く・・・何もない。第一に立っているのかも分からない。
 「伊澄さん・・・うちらは元の空間に戻れるんか?」
 「・・・戻れません。」
 「・・・!な、なんやてえええっ!!」
 これにはさすがに怒った。戻れないところにわざわざ連れてくるな・・・って。
 「伊澄さん!だったら・・・なんで連れてきたんや!!」
 「待って・・・出られる方法はあるの。この怨念の元を成仏すればいい。そうすれば、自然と怨念は消えてあのベンチに戻れるわ。」
 「・・・そうか。そうならとっととやっちゃいまひょ。」
 「そうね。」
 方向感覚は、あっても無くても一緒だった。どこがどの方向か。どこに、怨念の元が集中しているのか。それはいっさい関係ないから。
 「伊澄さん・・・どこや。どこに怨念の塊は潜んでいるのや・・・」
 「分からないわ。とりあえず、歩きましょう・・・」
 伊澄はゆっくりと足を出した。咲夜は怨念空間に入る前に伊澄に言われたコトを思い出して、伊澄の腕をつかんでいた。
 「でも、どこがどうなのか分からへんから・・・歩いてもムダのような気がするのは、うちだけやろか?」
 「いえ・・・これでも、怨念の元に近づいているのよ。大丈夫、この札を力で目的地に近づいているから。」
 「そ、そんなもんか・・・伊澄さん。」
 そんなの信用できるか!といきたいところだが、咲夜は今までも伊澄の仕事スイッチの凄さには数多く見たコトがある。信頼は少なからず生まれていた。
 「単なる風習だったのに・・・いつの間にか、鬼さんは嫌われ者になっていったのよ。節分という日に。それが確立された。」
 「なるほどな・・・うちらは良いと思っても、鬼にとってはそれだけ恨みが募っていたんやな。」
 「そう、それが・・・怨念空間を作り上げ、それが私たちの現実空間に解き放たれた。さっきも言ったけど、咲夜の手の異常はそのせいで起こったコト。」
 そう言うと、伊澄の足が止まった。
 「どうしたんや?まさか、鬼の怨念っちゅうやつか!?」
 「いえ、違いますよ。ここが鬼の怨念の強い部分です。なので・・・鬼さん!今すぐ出てきなさい!!」
 いつになく、伊澄の声が大きく・・・すると、鬼が一人出てきた。
 「あなたが・・・怨念のリーダー様ですか?」
 「ふっ、よくきたな!日本人代表の小娘!!」
 「ええ。友人の腕に異変が起きたので・・・それで、あなたたちの怨念を感じ取って頂きました。」
 鬼・・・何とも言えない。なんか、見た目は軟弱そうだぞ?
 「軟弱言うな!!俺は、日本の節分が嫌いなんだ!そして・・・豆がむちゃくちゃ嫌いなんだ!!」
 「まあまあ・・・つまりこれですか?えい。」
 伊澄は鬼に向かって、豆を数粒投げつけた。
 「う、うわあああっ!!お、お嬢さん!豆が嫌いだというのに・・・なぜ、あえて投げつける!?どうして、笑顔で投げつける!?」
 「だって、確かめたかったから。」
 「むむむっ・・・」
 咲夜は鬼の怨念よりも怖い・・・怨念を込めて鬼に豆を投げつけた。
 「この・・・なんで、うちに怨念がふりかかるんや!!こいつ・・・絶対に許さん!伊澄さんもじゃなくて、うちだけだなんて・・・!」
 「う、うわっ!!だから、投げるな!!」
 「豆投げられるぐらい・・・がまんせい!!子どもたちが豆を投げられなくなるやろ!!」
 「・・・」
 鬼は黙り込んだ。そもそも、なぜそこまで鬼は豆を嫌うのか。
 「あの・・・鬼さん。どうして、そこまで・・・豆を嫌うのですか?」
 「昔は良かった・・・風習というコトで、幸せが来るように。その呪文が『鬼は外 福は内』だった。でも・・・今は違う!悪いコトをすると鬼が来る!鬼に来てほしくなければ、豆をまけ!俺は、そんなに悪いヤツじゃないのに!!」
 「まあ・・・そうだったのですか。でも、今は・・・たしかに、そんなコトもありますよね。私はなんにも考えなかったときもありましたけど。」
 「・・・豆は、俺たちは嫌いだ。」
 「豆が嫌いなのですか・・・でも、現実空間に復讐するコトは許しませんよ。」
 伊澄は真面目な目になって・・・咲夜はもはや何も言うコトはできなかった。
 「君たちの言うコトはそれだけか?」
 「なんですって・・・」
 「私の怨念は、これで収まるわけではない!!今から、日本中の全ての人に呪いをかけてやる!!」
 「それはさせませんわよ!!」
 「できるかな?おい、援軍!!」
 すると、伊澄と咲夜の周りにはたくさんの小鬼が。
 「い、伊澄さん!どうすれば・・・!!」
 「この小鬼は、あの鬼からの怨念で生まれたもの。つまり、あの鬼を除霊すれば小鬼も消えるはず。」
 「でも、あの鬼・・・何かと強そうやで!」
 「私が力をためて、あの鬼に呪文をかけます。咲夜・・・時間がかかるから小鬼に攻撃をしておいてください。弱点のこの豆で。」
 「・・・分かったで。豆まきをすればええんやな!」
 「そうです!やりましょう!!」
 伊澄は手に力をためて・・・咲夜は豆まき!
 「いけっ!豆まきやで!!」
 「う、うわあああっ!!ま、豆はやめろ!!いたっ、いたたたっ!!」
 「ふっふっふっ・・・豆まき乱れ投げや!!」
 咲夜は本当に乱雑に投げた。豆は小さいけれど、咲夜から投げられる豆は拳銃から放たれる弾丸に準じるほどの強さだった。
 「な、なんだ!!この関西弁の少女の豆は・・・!!これだったら、普段の方がぜんぜん良いわ!」
 「なら、今すぐ現実空間の呪いを解けや!!」
 「それはさせん!!私は・・・今までの積年の恨みを晴らすんだ!!」
 「それはこっちのせりふや!!これ以上・・・アンタの好きにはさせへんで!!」
 咲夜の豆まきは、さらにヒートアップした。鬼はだんだんと勢いが無くなってくる。しかし、ここで咲夜の手が止まった。
 「な、なんやて!!豆が・・・豆がない!!てゆうか、さっきより小鬼の数が増えてるやんけ!!」
 「は、はははっ!!どうだ、思い知ったか。私がここにいる限り・・・小鬼の数は増え続ける。さて、豆のない今・・・君はどうするかな?」
 「くっ・・・!!」
 伊澄は・・・?呪文を唱え・・・咲夜には耐えきれないほどの力が、伊澄の手には備わっていた。
 「大丈夫です。咲夜・・・ありがとう。よく、あそこまで時間を稼いでくれました。」
 「伊澄さん・・・」
 「さあ、怨念よ!全ての苦しみよ・・・今、天に消えなさい!!」
 そう言うと、伊澄の手から光が。それは、全てのものを包み込んだ。
 「うわ、うわあああっ!!」
 「大丈夫です。あなたたちは痛い目に遭いませんから・・・さあ、安らかに消えなさい。」
 鬼は徐々にその姿を削られ・・・そして、全てが散った。
 「・・・」
 伊澄も咲夜も光に包まれて・・・意識を失った。

 「う、うん・・・」
 目が覚めると、そこは怨念空間に入る前の公園のベンチ。
 「戻って・・・来れたんやな。」
 「咲夜。」
 「伊澄さん・・・」
 「どうもありがとう。私の仕事に付き合ってくれて。」
 「ええんよ。少しだけ、私も鬼に言いたいコトもあったしな。」
 ただそう言って・・・鷺ノ宮邸に戻った。
 「伊澄さん・・・もう一回豆まきしよ。な?」
 「ええ。そうですね・・・でも、今度は・・・安全祈願で。」
 「・・・そうやな。」
 伊澄と咲夜は、ある願いを込めて豆まきをした。
 『二度と鬼の怨念がこの世に現れませんように。』
 「これで・・・ええんやな。」
 「はい。これで、鬼さんも大丈夫だと思います。」
 「そういえば・・・恵方巻がまだあったな。」
 恵方巻・・・随分久しぶりに聞いたな、と伊澄は思いながら、
 「そうですね・・・あと二つ残っていますから、一つずつ食べましょうか。」
 「おっ、それはええな。じゃあ、早く部屋に戻ろ。なんか、怨念空間ではりきって豆まきしすぎたせいか、腹がぺこぺこや。」
 「ふふふっ・・・じゃあ、お茶でも入れてゆっくりしましょうか。」
 「そうやな。ほな、戻ろ。」
 一つの怨念が消えて・・・伊澄と咲夜は笑顔で屋敷の中に戻っていった。
 だが、豆まきをしたときにもう一つだけ・・・二人で願いを込めた。
 『私たちの友情が永遠でありますように。』
 そう願いを込めて・・・伊澄と咲夜は今という時間を共に過ごすのであった。


SS『サイキック・ストラテジー』 Fin
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