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 瑠奈によるギャルゲー講座が幕を閉じ、家が地元であるため俺はつばさと一緒に帰ることにした。
 当然であるが、つばさは男子用の制服を着ている。
 常盤学院の正門を出ると、空は既に赤くなり始めていた。普段だったら家にいるかどこかの店にいる時間なので、学校の前にいるのは新鮮に感じる。
 そして、つばさの歩調に合わせて歩き始めるのだが、こいつと何を話していいのかよく分からない。
 ――どうしてメイド服とかを着ても大丈夫なのか。
 ――どうして瑠奈と仲がいいのか。
 これ以外も訊いてみたいことはたくさんあるのだが、その全てがつばさの答えにくそうなことだったり、気分を悪くしそうなことなので俺は何も言うことができない。
 つばさが話しかけるのを待つか。
 と、俺は完全に受け身の体制を取りつつ帰り道を歩く。
 常盤学院から歩いて数分ほど経つと、青柳市内を流れる一級河川、青柳(あおやぎ)川が見えてくる。
 川を挟んだ先には、遠くに東京二十三区の高層ビルも小さくであるが見える。
 俺とつばさは青柳川の側にある歩行者と自転車専用の道を歩いている。
「ちょっと、ここら辺で休むか」
 なかなかお互いに言葉が出なかったので、俺はつばさにそう声をかける。突然だったからか、つばさは少し驚きつつも、
「う、うん」
 と言って、川の畔に繋がっている階段に座った。
 俺はつばさの左隣に座り、バッグを横に置く。
「綺麗だろ、この風景」
「そうだね。一面が夕陽に照らされてて、川の水も光ってて」
「ああ。俺、小さい頃からこの川から見る風景が好きなんだけど、特に夕焼けに照らされる青柳川と、西の方に見える山の風景が一番好きなんだ」
 遠くに山の見える広い景色と、穏やかに流れる水のせせらぎが俺の気持ちを癒してくれる。小さい頃から、本当にこの風景が好きだった。
「色々とへこんだ時でも、ここにいるとそういうことも忘れられそうで。やっぱり人間も……心の拠り所は自然なのかなって思えるんだ」
「水嶋君……」
 つばさはゆっくりと俺のことをじ~っ、と見てくる。
「変なこと言っちゃったな」
「いや、そんなことないよ」
 優しく、つばさは微笑んだ。
 本当にお前って、女にしか見えない。男ってことが不思議なくらいに。俺と同じ制服を着ているってこと自体が違和感にしか思えないくらいに。
 俺はゆっくりと訊いてみる。
「つばさって、その……女装に興味があるのか? それとも、やけに女らしいから女になりたいのか?」
「……」
 ストレートに訊きすぎたか。
 思った通り、つばさは言葉を詰まらせてしまった。彼は俯いてしまう。
「ご、ごめんな。別に俺はつばさがどうであっても……」
「……分からない」
「えっ?」
「分からないんだ。私は単に女装がしたいのか、それとも女の子になりたいのか」
「つばさ……」
「でも、これだけは言える。水嶋君みたいにかっこよくなくていいって」
 ――かっこいいかはさておき、俺みたいじゃなくていい?
 それって一体どういうことなのだろうか。
 しかし、それは……つばさの笑顔に隠れているどこか悲しい表情に何か理由があるのかもしれない。それはきっと女装をしたいだけなのか、それとも女になりたいのかどうか分からないということにも繋がっているはずだ。
「何か、男らしくあることに嫌なことでもあるのか?」
「……」
 今度は露骨に悲しそうな表情を見せる。
 多分、女らしいことに憧れを持っているというよりも、男らしいことで何か嫌なことでもあるんだということは分かった。
 少し冷たく感じられる風がつばさの髪を揺らす。
「……昔、誘拐されたことがあるんだ」
「誘拐?」
 つばさはゆっくりと夕焼け空を見上げる。
「七年前、家族で遊園地に行ったんだ。その時も憩いの場の時みたいに、女の子の服を着てた。色々なアトラクションに行って、凄く楽しかったのは覚えてる」
 つばさの女装趣味は瑠奈の影響じゃなかったってことなのか。つうか、今の話だとこのことは彼の家族は理解しているということか。
「お昼ご飯の時間になって、お父さんとお母さんは屋台に行って。お姉ちゃんがいるんだけど、お手洗いに行って私一人がフードコートのテーブルに座ってたんだ」
「まさか、その時に……」
「うん。誘拐されたんだ」
「何て奴だ……どうしてそいつはつばさを誘拐したんだよ」
「分からない。小学生の私にはとにかく、誘拐されたことで気が動転しててそれどころじゃなかった」
 確かに、俺だって今誘拐されたら気が動転するし、それは当たり前だな。
「きっと、一人残された小学生の女の子っていうのは犯人にとって、一番誘拐しやすかったからだと思う。見た目は女の子だったから私を狙ったんだと思う」
「まあ、幼い女の子以上に華奢な人はいないからな」
「私は必死にお父さんとお母さん、お姉ちゃんの名前を叫んだ。『助けて!』とも叫んだ。その声にみんな気づいてくれたけど、犯人の足の方が速かった」
「そのままつばさは連れ去られたってことか」
 と、俺は言うのだがつばさは首を横に振った。
「違うのか?」
 今度は首を縦に振った。しかし、より一層悲しそうな表情になる。
「連れ去られたのはそうだけど、犯人の仲間が待っている車が見えたところで男の子が一人、犯人に立ち向かってくれたんだ」
「男の子が?」
「私と同じぐらいの歳の男の子で、必死になって犯人たちに立ち向かった。でも、男の子は犯人とその仲間にお腹を殴られて、その場で蹲った」
「酷い、奴らだな……」
「それで、私は犯人の車に乗せられて連れ去られたんだ」
「そうか……」
 大抵の人間なら遭いそうもない出来事だからこそ、つばさの記憶に深く刻まれているんだ。しかも、目の前で男の子が犯人の仲間によって被害を受けたとなっては、酷く刻まれるのは当然のことなんだろう。
「その後、遊園地にいたお客さんが犯人の使った車のナンバーを覚えてくれてて、私は何とか助けられた。でも、その間はずっと私は犯人に対しての恐怖よりも、犯人に立ち向かってくれた男の子に対する罪悪感に脅かされていたんだ」
「罪悪感……」
 つばさは大粒の涙を流し始めた。
 苦肉にもその涙は夕焼けに照らされて、俺の視界の中で一番輝いていた。
 犯人への恐怖よりも、つばさの場合は犯人からの暴行に遭った男の子に対する罪悪感に苛まれていたんだろうな。
 それは、もしかしたら今も続いているのかもしれない。
「男の子に痛くて苦しい思いをさせたのも、自分が女の子らしくいるから。自分が弱いからだって思った」
「ちょっと待てよ、でもそれは……」
 最初、つばさは「男らしくなくていい」という趣旨の言葉を言った。でも、今の話を聞くとそれとは全く逆で、
「女らしいことが嫌だってことになるぞ」
「……うん。だからあの後、男らしくなろうと思って学校でも積極的に色々なことをしてみようとした。でも、それは周りの人が受け付けなかった」
「もしかして……」
「うん。気持ち悪がられたんだ。急に男っぽくなったから。いつもは教室の隅にいるような人が、いきなり教室の真ん中で多くの人の中心に立つようなことしたから」
「……」
 確かにそんな奴が実際にクラスでいたとしたら気持ち悪がるかはともかく、俺もきっととまどう。
 今の俺みたいな高校生だったら、理由を聞き出すことができるかもしれない。でも、小学生では口で事を進めるよりも、大抵は行動で進めてしまう。
 きっと、つばさの変化について行けなかったんだ。だから、周りの子供達はつばさの側から『避ける』という行動をとったんだと俺は思う。
「それでも、中学生になると少ないけれど友達はできたよ。でも、全部女の子だったけどね」
 つばさは作り笑いをした。全員女子っていうのも何だか頷けるな。
「今年の四月になって、瑠奈ちゃんに会って。瑠奈ちゃんに女子の制服きっと似合うと思うから着てみないかって言われたとき、突然で驚いたけど嬉しかったんだ。私のことを見て、想ってくれる人がいて」
「まあ、瑠奈の場合は自分の趣味ってことも考えられるけどな」
「……女らしくいていいのかなって思ったけれど、やっぱり分からない。女らしくいると誰かに迷惑をかけて。男らしくいると周りのみんなが避けて。どっちにすればいいのか私には分からないんだ……」
 つばさは必死に涙を拭った。それでも潤んでいる眼はどこを見ているのか分からない。
 男らしくいるときの苦しみと女らしくいるときの苦しみ。タイプは異なるけど、つばさにとってはどちらも辛くて耐え難いこと。
 でも、いずれかの選択肢を選ばなければならない。
 そして、その二者択一な選択の決断を俺に託されているような気がした。隣に座って、彼の涙を見ている俺が。彼の過去を聞いた俺が。
 俺は数少ないつばさについてのことを頭の中で探る。
 ――女らしくいるから男の子が傷ついた。
 ――男らしくいるから周りの人は気持ち悪がって避けた。
 でも、そんなことはあくまでもつばさからたった今聞いた話だ。俺がその場面を実際に見たわけじゃない。
 俺が実際に見たことのある『百瀬つばさ』は、もうその悩みの『答え』を見つけているようにしか思えない。昨日と今日の放課後の出来事がそれを物語っている。
だからこそ、俺はその『答え』を後押ししてみようと思う。
「つばさ」
「……なに?」
「試しに自分が女だと思って、この風景を見てみろよ」
「う、うん」
 突然だったのか、つばさはとまどいながらも俺の言った通りのことをする。青柳川の向こうに広がる風景を見る。
「この風景がどうかしたの?」
「今、つばさが見ている風景は、さっき俺と見たのとどこか変わってるか?」
「か、変わってないけど……」
 つばさはゆっくりと首を横に振った。
「だったら、つばさの選択は間違ってない」
「私の……選択?」
「ああ」
 風が強く吹き、河原に生える自然が鳴いている。
 俺は前髪を右手でたくし上げ、つばさのことを見る。
「俺はつばさのことを、女子の着るような服を着ているところしか見たことがないんだよ。とか言っても女子の制服とメイド服だけだけどな」
「うん……」
「でも、その時はそれまで知ってたつばさにはなかった表情だったんだ。本当に楽しそうっていうか何ていうか。一つ言えるのは、お前は自然体でいていいと思うんだよ」
「で、でも……私の望むままにいたらきっと……」
「怖がるなよ」
 弱音を吐いてしまうつばさに、俺は半ば強引に口を挟んだ。
 そんな俺が恐かったのか、何か嫌なことでも思い出してしまったのか……つばさは少し怯えていた。
 そうだ。あの時きっと、つばさは今のように怯えていたんだ。そんな時に隣にいる俺が手を差し伸べなくてどうする。

「俺はお前のありのままを受け入れる。だって、俺たちはもう友達だろう?」

 友達。
 つばさにとって、自分のことを考えてくれる男の友達はいなかった。自分のことを受け入れてくれる友達はいなかった。
 つばさのことを聞いたとき、俺はどう思った?
 ――女装趣味の変態とでも思ったか?
 ――女々しくて気持ち悪いとでも思ったか?
 ――今すぐにでもつばさから離れたくなったか?
 そのいずれでもなかった。俺はつばさのことを訊いていくうちに、いつの間にかつばさのことを支えたくなったんだ。目が離せなくなったんだ。
 そう感じる理由はもう一つしかない。
 俺はつばさのことを思いやっているんだ。きっと、つばさはそんな俺を信じて話してくれた。そういうことのできる人たちのことをどう呼ぶ?
――友達。
 それ以外に何があるんだよ。
 つばさは目を潤ませながら、ゆっくりと口を開いた。
「友達……」
「ああ」
「……私なんかの友達になってくれるの?」
「当たり前だろうが。瑠奈のギャルゲーと乙女ゲーの話を一緒に聞いた仲だろ?」
 そう言うと、つばさは右手を口に当ててくすっと笑ってくれた。
 本当につばさは女子よりも女らしい。
「昨日の制服姿も今日のメイド服姿も似合ってたぞ」
「あ、ありがとう。ち、ちなみにこの制服姿はどう?」
「……女子が男子の制服を着させられてるって感じだな」
 素直にそう答えると、つばさの表情は笑顔のまま変わらなかった。きっと、俺の答えが自分の望み通りの答えだったからだろう。
「こんなに笑ったの、何年ぶりかな。たぶん、あの日から今くらいに楽しい時間はなかったと思うよ」
「そうか」
「水嶋君、その……ありがとう」
 つばさは恥ずかしそうにぺこりと可愛らしく頭を下げた。
 何度も同じようなことを言ってしまうが、このどこか汐らしいところも何だか女子よりも女らしい。
 俺はゆっくりと右手でつばさの頭を撫でた。
「ひゃうっ」
「俺はたいしたことをしたつもりはねえって」
「……ふあっ」
 どうやら、つばさは俺に頭を撫でられたことが想定外だったらしく、その驚きと撫でられるのが気持ちいいのか喘ぎ声をあげている。
「つばさだったらきっと、友達できると思う。少なくとも瑠奈よりはな」
「る、瑠奈ちゃんだっていい人だよっ! わ、私よりも……」
「……そこだよ。そういうことを言えるつばさは優しい奴だ」
「水嶋君……」
 俺はゆっくりと右手をつばさの頭から離す。
 正直、瑠奈は男子の殆どを下僕にしているけど、憩いの場での彼女は果たして俺とつばさを下僕として見ていたのだろうか。
 乙女ゲーなどの話をしているときも何だか楽しそうだったし、何やかんやで俺の言っていることに耳を貸してくれていたし。少しは俺たちをクラスメイトという対等な立場として見てくれていると思うけど、瑠奈のことだから真意は定かではない。
 でも、ここで一つの疑問が浮かぶ。
――この二人はどのようにして出会ったのか?
 理事長の娘である、福原瑠奈。
 普通の男子生徒である、百瀬つばさ。
 いくらつばさが他の男子よりも女々しく、瑠奈の興味を惹くような魅力を持っていたとしても、あの瑠奈が自分からつばさに接触することはあるか? つばさから瑠奈に話しかけることは多分ないだろうし。
「なあ、つばさ」
「なあに?」
「つばさはその……瑠奈とはどうやって知り合ったんだ? 同じクラスメイトだけどちゃんと話したきっかけっていうか」
「瑠奈ちゃんと話すようになったきっかけ?」
「ああ。何だか気になって」
「ええと、確か一週間前だった気がするけれど……」
 一週間前って随分最近だな。先週の金曜日ってことか。
「あの日は私、図書館で読みたい本が放課後はずっと残ってて。それで、今くらいの時間に校舎を出て正門を出ようとしたときだったかな」
 その後の話を聞くと大体こんな感じらしい。
 図書館から出て、一人で帰ろうとしたつばさは正門が見えたところで不機嫌に校内に戻ってきた瑠奈を見つけた。しかし、瑠奈の後ろからは福原家のSPのらしき人が二人ほど追いかけてきたらしい。
 そんな光景を見ても当然、つばさは素通りをするつもりだったのだが、急に瑠奈に腕を組まれて、
『あたし、この人と大事な約束してたの! だからついてこないでっ!』
 と、大声で瑠奈はSPに言い放ち、SPは仕方なく帰っていった。
 つばさは何が何なのか分からなくなり、その場で直立不動。固まって何も言えなかったのだが、瑠奈が、
『ごめんなさい。私のせいで迷惑かけちゃって』
 と、俺からしては信じられない言葉をつばさに言い、
『お詫びとして何かあなたにしたいんだけど……って、確かあたしのクラスにいる百瀬つばさよね?』
 瑠奈は迷惑をかけてしまった相手がクラスメイトの百瀬つばさであったことを知る。そして、つばさの見た目が女らしいのか、瑠奈はつばさに興味津々になったらしい。
 昨日の制服の件については最初から思っていた通り、瑠奈からの提案だったらしい。つばさは今までぜひ一度は着てみたいと思っていた女子の制服を着られるということで、喜んで頷いたのだという。
 それから約一週間後の昨日、ついに制服を着るときが訪れ、試着をした直後に俺が現れたということらしい。
「なるほどな……」
「昨日までの間も瑠奈ちゃんと話したし、瑠奈ちゃんは悪い人なんかじゃないよ。それに、瑠奈ちゃんにはさっき水嶋君に話したことも言ったし」
「そ、そうなのか」
 念押しされてしまった。
 そうか、だから昨日……瑠奈があんな反応を見せたんだな。
 そう考えれば、確かに瑠奈は悪い奴じゃないとは思うが、他人からどこか距離を置かれるような要素が幾つもある。
 でも、つばさにとって瑠奈は大切な友達なのかもしれないな。
「放課後の『憩いの場』のことは今日、急に言われたのか?」
「うん。昼休みに瑠奈ちゃんと一緒に部室棟に行って、メイド服とティーカートがあったんだ。放課後にメイド服姿を見せて、水嶋君を驚かしてやるんだって」
「端から俺に何かするつもりだったのか」
 というか、俺はつばさのメイド服姿よりも、瑠奈が俺の手を引いて憩いの場まで連れて行くことの方がよっぽど驚かされたな。
 それに、つばさに関しては昨日の放課後に例の制服姿を目撃しているわけだから、免疫がついちまったよ。
「でも、水嶋君ってあまり驚かないんだね」
「あ、ああ……そうだな」
「そうだよね。昨日の放課後だって、すぐに私が誰なのか気づかなかったし……」
 つばさは俯いた。
 こ、これは少しよろしくない展開だな。何か言ってやらないと、また彼女……いや、彼を泣かせてしまうことになる。
「えっと、それはつばさが別のクラスの女子だと思ったんだ。昨日の制服姿が凄く似合っていたから、な」
「はうっ」
「どこの可愛い女子なんだろうって思った。瑠奈に負けてなかった気がする」
「ふえっ……!」
 まったく、何を言っているんだろうか。俺って奴は。
 普段はこういう言葉はあまり言わないんだが。慣れない言葉は言うべきじゃないな。それに、相手は一応男子だし。
 まあ、言われた本人は嬉しそうだからよしとしておくか。
「あ、あのさ。水嶋君」
「なんだ?」
「……明日からも私たちに付き合ってくれる?」
「そう、だな……」
 つばさの素朴な質問。
 付き合うというのは、きっと憩いの場に行って今日の放課後みたいに瑠奈とつばさと三人で過ごすことだろう。
 俺は左手で後頭部をかいた。
「まあ、いいけど」
 俺はぼそっと呟いた。
 そんな生半可とも思えるような返答でも、つばさの表情はぱっと明るくなる。
「うん!」
 つばさってこんなにはっきりとした声が出せるのか。
 それが俺の素直な感想であり、その時のつばさの顔はやっぱり女だった。本当に女らしい奴だよ、まったく。
 昨日から、こんなことを何回言ったんだろうか。
 それだけ女らしくいることに違和感がないってことなんだよな。そう思っている限り、つばさのことを理解してやれそうだ。
「じゃあ、そろそろ帰るか」
「そうだね」
「あと、友達として……よろしくね」
「ああ」
 つばさと話していたら、夕日の日差しもなくなっており空も徐々に暗くなり始めていた。人と話していると時間が経つのがとても早い。
 俺とつばさは立ち上がり、横に並んで再び川の下流の方向へと歩き始める。
 ここまで来るには何だかぎくしゃくしていたけれど、今は自然とつばさと足を並べて歩いている。つばさは何だかそれが嬉しそうだった。
 その後すぐにつばさと別れ、俺は自分の家に帰るのであった。


第7話に続く。
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